【12月2日 AFP】米フロリダ州の病院に運び込まれた意識不明の男性患者(70)の胸に「蘇生措置拒否(Do Not Resuscitate)」とタトゥーで書かれていたために、このメッセージが患者の意思を正確に伝えるものなのかどうか悩んだ医師らが倫理的なジレンマに直面した。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」11月30日号に掲載された担当医師らの話によると、この男性は呼吸困難および高血中アルコール濃度で、マイアミ(Miami)のジャクソン記念病院(Jackson Memorial Hospital)に運び込まれたが、身元を確認できるものを所持していなかった。

 医師らはこのタトゥーによる蘇生措置拒否メッセージは、患者の意思を明確にするどころか、状況を混乱させるものだったと述べた。当初は「不確実な状況に直面した場合には、取り返しのつかない措置は選ばない」という原則に従い、メッセージを尊重しないことに決定しようとした。

 しかし、メッセージには「Not」の部分に下線が引かれ強調されていた上に署名も入っており、蘇生措置拒否の意思を理解してほしいという強い思いが見て取れた。そこで医師らは倫理問題の専門家に相談することにした。医師らは患者の生死の選択について検討する間、基礎的な治療を施すことで時間を稼いだ。

 倫理問題の専門家は「タトゥーが真の意思を示していると推論するのが最も合理的」だと述べ、タトゥーを尊重するよう医師らに助言した。医師らがこのアドバイスに従った結果、患者はその夜に死亡した。

 ソーシャルワーカーはやがてフロリダ州の保健当局が発行したこの患者の蘇生措置拒否指示の写しを発見した。その内容がタトゥーと一致していたので、医師らは胸をなで下ろした。(c)AFP