【11月30日 AFP】先史時代の女性は、現代の女性ボート選手より強い腕を持っていたとの研究結果が29日、発表された。これは最初期の農業で、畑の耕うんや穀物の製粉などをすべて手作業で行う厳しい労働に女性が従事していたことに起因する可能性が高いという。

 米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に掲載された論文によると、今回の研究では、7000年前の中欧地域に住んでいた女性と現代女性──ボート競技の選手と一般的な大学生──について、それぞれの骨を初めて比較したという。

 ボート選手との比較では、7000~7400年前の新石器時代に生きていた女性らの腕骨は、その大きさの割に強度が11~16%高いことが分かった。比較されたのは名門の英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)女子ボート部の競技選手たちだ。

 比較対象となった選手らは大半が20代前半で、7年間のトレーニングを積んでいた。選手らは毎週21時間の練習をこなしており、練習でボートをこぐ距離は平均で120キロに及ぶ。

 一方のケンブリッジ大の典型的な学生との比較では、農耕を行っていた先史時代の女性らの腕は30%近く強度が高かったという。

 骨の密度、曲率、形状などについては、運動の反復もしくは不足が影響を及ぼすと考えられる。

 論文の筆頭執筆者で、ケンブリッジ大のアリソン・マッキントッシュ(Alison Macintosh)氏は「女性の骨を男性との比較でなく、女性に限定して解釈することで、先史時代の女性らの日々の活動がどれほど厳しく、変化に富み、骨が折れるものだったかが見え始める。ここには数千年にわたる女性の労働の歴史が秘められていることが示唆される」と話す。

「農具のすきが発明される前の時代の自給農耕では、作物の植え付けから畑の耕うん、穀物の収穫などをすべて手作業で行う必要があった」

「それに加えて女性らは、家畜に餌と水を運んだり、乳と肉の処理をしたり、獣の皮や羊毛を布地にしたりなどの作業も行っていた可能性が高い」

 また、女性の主な仕事の一つに「鞍(くら)形石臼」と呼ばれる大型の石を2個使って穀物を粉にひく作業もあった。

 論文の主執筆者で、ケンブリッジ大の研究者のジェイ・ストック(Jay Stock)氏は「数千年もの間、女性の厳しい肉体労働が初期の農耕経済の重要な原動力となっていたことを、今回の研究結果は示唆している」と述べた。(c)AFP