排せつ物にも指紋同様の個人差か、著名アーティストが研究に協力
このニュースをシェア
【11月27日 AFP】排せつ物には、指紋と同じくらい個人差があるかもしれない──ニュージーランドの研究チームが26日、こんな興味深い研究結果を発表した。患者一人ひとりに合わせた「オーダーメイド医療」の大幅な促進につながる可能性がある。
この研究は、学術研究とアートの意外なコラボレーションの産物だ。オークランド大学(University of Auckland)の研究者らが調べたのは、著名なポップアート作家ビリー・アップル(Billy Apple)氏の排せつ物。
調査の結果、アップル氏が1970年に発表した作品「Excretory Wipings(排せつ物を拭き取ったものの意)」に付着していた排せつ物が含有する細菌種の半数近くが、46年後の同氏の排せつ物にも含まれていることが分かった。
研究を率いたティリニ・ジャヤシンギ(Thilini Jayasinghe)氏によると、80歳になったアップル氏の腸内細菌叢(そう)は、35歳当時と比べて細菌の種類は減ったものの「年齢や環境、食生活の著しい違いにもかかわらず、46年を経ても細菌種の45%が残っていた」という。
研究チームは学術誌「ヒューマン・マイクロバイオーム・ジャーナル(Human Microbiome Journal)に発表した論文で、オーダーメイド医療では患者の遺伝子だけでなくマイクロバイオーム(ヒト常在細菌叢)も考慮すべき可能性があることを示唆する研究結果だと指摘している。
オークランド大学リギンズ研究所(Liggins Institute)の上席研究員で分子生物学者のジャスティン・オサリバン(Justin O'Sullivan)氏は、「これらの微生物は複雑で謎に包まれたさまざまな方法でヒトの体組織と作用し合い、私たちの心身の健康や発達に重要な役割を担っている」と述べた。
アップル氏は、英ロンドンの王立美術学校(Royal College of Art)で学んだあと米ニューヨークに渡り、1960年代にはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)をはじめとするポップアーティストらと共作もした。「Excretory Wipings」に使われた「使用済み」のトイレットペーパーは作品発表後も保管されていた。(c)AFP