【11月20日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所跡地近くで発見された、パンの配給カードをかたどった珍しいブローチが公開された。戦時中にポーランドのウッジ(Lodz)で制作され、結婚記念日に贈られたものとみられる。

 ブローチはステンレス製。ドイツ語で「パン配給カード」という文字とヒンダ・ワイクセル(Hinda Weiksel)という女性の名前、そして「ハンズアーテン(Hanseaten )通り42」という住所が刻まれており、女性が当時ナチス・ドイツの占領下にあったウッジ、別名リッツマンシュタット(Litzmannstadt)のゲットー(強制隔離居住区)に住んでいたことが分かる。

 ブローチの裏には「愛するヒンダへ、6回目の結婚記念日に。パウェルより。8月15日、1937年~1943年」と刻まれている。

 強制収容所の記憶を伝える品々を保存する活動をしている団体「Foundation of Memory Sites near Auschwitz-Birkenau」(FPMP)を運営するダグマル・コピアシュ氏(Dagmar Kopiasz)氏は20日、AFPに対し、ゲットーで暮らしていた2人にとって配給のパンは死活問題であり、それをかたどったブローチは愛情のシンボルとして重要な意味を持っていたと語った。

 コピアシュ氏によると、このブローチは戦後、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡地の近くに住んでいた家族ががらくたの山から発見して数十年間保管していたが、今年家族の1人がFPMPに譲渡したという。

 ヒンダという女性のその後についての記録はないものの、他の数多くの犠牲者と同様にアウシュビッツに送られて死亡したと考えられている。(c)AFP