【11月18日 AFP】ロシアの国営テレビ局は17日、来年2月の平昌冬季五輪に同国代表選手団がドーピング問題で出場禁止となった場合、韓国からの中継放送を取りやめる可能性を示唆した。国際オリンピック委員会(IOC)は12月に開かれる理事会で、2015年に大規模な不正の証拠が発覚したロシアの参加可否を検討するとしており、ロシアのインタファクス(Interfax)通信は、全ロシア国営テレビ・ラジオ放送会社(VGTRK)の広報担当者の発言として、「選手団が冬季五輪への出場を禁止された場合、大会は放送しない」と伝えた。

 ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)は国営メディアの決断を「理解」できるとしており、ドミトリー・ぺスコフ(Dmitry Peskov)報道官は、「五輪中継には非常に高額な放映権を取得する必要がある。これらの費用は、ロシアの視聴者から大きな関心が寄せられることを前提に投入されることは明白だ」と述べた。

「ロシアが五輪に参加しないのであれば、これらの番組に対する視聴者の興味はそがれることになるだろう。しかし、そのことについて話すことは時期尚早だ。五輪への準備は進められており、わが国のスポーツ当局も、各国際競技団体との話し合いを辛抱強く続けている」

 国営ロシア通信(RIA)は、同国スポーツ界に影響力があるビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)副首相のコメントとして、「母国のアスリートが出場しないのであれば、放送することに何の意味がある?(各国際団体による)これまでの裁定から判断すると、すべての方向性が見えてくる。ロシアやロシアスポーツ界を侮辱することが目的ならば、それは達成されている」と伝えた。

 同国では当初、VGTRKのロシア1(Rossiya 1)をはじめ、政府系テレビ局の第1チャンネル(Channel One)、そして国営ガスプロム(Gazprom)系列のマッチTV(Match TV)の3局が五輪放送を行う予定となっていた。

 経済紙ベドモスチ(Vedomosti)の報道では、代表チームに出場禁止処分が科されれば、第1チャンネルも五輪中継をボイコットすると伝えられているが、同局は現時点でコメントを出していない。一方、マッチTVは現在も放送に向けた契約を保持しており、広報担当者は「誰もロシアを大会から除外していない。この話題について話をすることは、何の意味もない」と述べた。

 世界反ドーピング機関(WADA)は先日、大規模な不正の証拠が発覚して2015年から資格停止処分を科されているロシア反ドーピング機関(RUSADA)の処分解除を見送った。同年に放送されたドキュメンタリー番組で、アスリートによるドーピング計画の疑惑が発覚したことを受け、同機関の独立調査官リチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏は2016年に報告書をまとめ、同国がメダル獲得数で最多を記録した2014年ソチ冬季五輪を含め、2011年から2015年まで国家ぐるみでドーピングの隠蔽(いんぺい)工作をしていた疑いがあると指摘した。

 ロシアは国家ぐるみのドーピング疑惑を一貫して否定しており、クレムリンもWADAが決めた処分継続について「不公平だ」と反発した。2016年に開催されたリオデジャネイロ五輪で、IOCはマクラーレン報告書を根拠にロシアの出場停止を求めるWADAの提言を取り合わず、同国の出場可否については各競技団体の判断に委ねた。(c)AFP