【11月15日 AFP】イランとイラクの国境地帯で12日夜に発生し、400人以上が犠牲になったマグニチュード(M)7.3の地震。震源に近いイラン西部サレポレザハブ(Sar-e Pol-e Zahab)では、多くの住民が家を破壊され、夢を打ち砕かれた。だが、被災者の怒りの矛先は地震そのものではなく政府に向けられている。

「見てくれ、何もかも破壊された! 政府には住宅ローンを帳消しにするくらいのことはしてもらわないと」。労働者階級が暮らすシャヒードシールーディー(Shahid Shiroudi)地区の住民、モルタザ・アクバリ(Mortaza Akbari)さんはそうぶちまけた。

 人口約8万5000人のサレポレザハブでは、この大地震で少なくとも280人が死亡した。アクバリさんは生き延びたが、家財のほぼすべてを失った。

 アクバリさんのアパートはマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)前大統領肝いりの公共住宅事業の一環で建設され、設計上はM8.0の地震にも耐えられるはずだった。しかし今、アパートは激しく損壊している。

「ここには貧乏人と労働者しかいない。お手上げだ。ここは住めたもんじゃない」とアクバリさん。

 こうした低所得者向け公共住宅は、超保守的なアフマディネジャド前政権のポピュリズムを象徴するもので、同政権下の2005~2013年に国内各地に次々と建設された。

 貧しいイラン人の多くにとって、この公共住宅は手の届くそこそこの住まいとなっている。

 しかしサレポレザハブでは、この公共住宅に申し込んだ人々はなけなしの家財を失う被害に遭った。

 アクバリさんは「若者に結婚、家具などの家財の購入を勧める政府のローンを限度額まで使い切った。だけど、もう何も残っていない」と肩を落とした。(c)AFP/Siavosh Ghazi