【11月11日 AFP】欧州連合(EU)は10日、ロシアによる脅威が増大していることを受けて、EU圏内における兵士と軍装備品の移動を容易にすることで防衛力を高める計画を発表した。

 EU当局は移動の遅れの原因となっている税関検査を合理化し、道路や橋、鉄道などを戦車のような重量級の軍装備品の移動に確実に耐えられるようにするインフラ計画の見直しなどを検討している。

 北大西洋条約機構(NATO)軍の上級司令官は、EU域内で軍装備品などを迅速に移動させようとしても煩雑な越境手続きに妨げられるため、ロシアが武力侵略を試みた場合、重要な抑止効果が損ねられると警鐘を鳴らしている。

 冷戦(Cold War)後、欧州で軍事行動を取る必要性は減少してきた。しかし2014年のウクライナ危機とロシアのクリミア(Crimea)半島併合によって、再び東欧からの脅威が増している。

 欧州委員会(European Commission)は試験期間後、2018年3月までに実行計画の承認を加盟国に求める考えだ。

 NATOは今週、新たな兵たん拠点を設置し、欧州全域への兵員・軍装備品の移動を改善する計画を発表したが、それには輸送網を改善するためのEUの協力が欠かせない。同計画には、欧州全体、特に冷戦中はNATOが利用できなかった東欧の旧共産主義諸国の交通網に関する査定も含まれている。

 NATO側は、鉄道網や港などの交通インフラの多くが今では民営化され、国営の頃よりも軍事利用が困難になっていることも問題が複雑化している要因だとしている。(c)AFP