ピッチの脇には酸素ボンベ、歴史をつくるチベット自治区のサッカークラブ
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【11月12日 AFP】来シーズンの中国サッカーでは、3部リーグに所属するすべてのチームがラサ城投FC(Lhasa Chengtou)とのアウェーゲームに二の足を踏むに違いない。何しろチームの本拠地は、標高3658メートルという酸素休憩が必要な高地にあるのだ。
ラサ城投は今季、チベット自治区のチームとしては初めてとなる中国のプロサッカーリーグ3部への昇格を果たした。ところがクラブには、本拠地で試合をできるのかという疑問が付きまとっている。何しろ7億3500万元(約126億円)を費やして建造した近代的な文化体育中心スタジアム(Cultural and Sports Center stadium)は、中国で一番、世界でも有数の高地にある。
ラサ城投のホームゲームでは、15分おきに酸素休憩を取ることが認められていて、選手はピッチ脇に並べた小型のボンベから酸素を吸入し、高山病に付随するめまいや吐き気を予防する。
所属メンバーのほとんどが、チベットではなく中国の選手で構成されているラサ城投は、ホーム&アウェー方式のプレーオフで瀋陽東進(Shenyang Dongjin)を2-1で破り、乙級(3部)への昇格を勝ち取った。ホームゲームは本拠地から4000キロ離れた中立地の恵州(Huizhou)での開催だったが、これは高度よりもピッチの状態に懸念があったためと言われている。その中でチームはホームでの初戦を2-0で制すと、アウェーでの第2戦は0-1で敗れたものの、プロリーグ行きをもぎ取った。
クラブ幹部は国営新華社通信(Xinhua)に対して「サッカーはチベットの人々に深く根付いていて、間違いなく一番人気のスポーツだ。ラサの旧市街へ行けば、学校の終わった子どもたちが集まって、至る所でボールを蹴っている光景が見られるはずだ。ラサにはこの町ならではのストリートサッカーの文化がある」と話している。
■政治的な意図も
それでも、ラサ城投はプロリーグでは厳しい戦いが予想される。また、2万人以上を収容する陸上トラック付きのスタジアムは、8月に中国サッカー協会(CFA)から試合開催の許可を得たばかりで、CFAが山の上にあるホームスタジアムでの試合を本当に認めるかは不透明な状況だ。
地元警察は否定しているが、深セン風鵬(Shenzhen Fengpeng)との試合の後には、アウェーチームの選手6人が高度のせいで担架で運び出されたといううわさがネットを駆け巡った。
イギリスに支配されていた時期のあるチベットには、20世紀初頭以来のサッカーの長い歴史があるが、ラサ城投は3月に創設されたばかりのクラブにすぎない。それでも、チベットに対して厳しい情報統制を敷く中国当局は、全国リーグに所属するクラブの誕生で、チベットの中国化が進みやすくなるのではないかともくろんでいる。
地元当局は昨年、習近平(Xi Jinping)主席の国家ぐるみの方針に足並みを合わせる形で、自治区内のサッカーの発展を促進させる計画を発表した。新華社によれば、当局は選手がプレーしやすくなるための対策を講じ、ピッチ脇に5メートル間隔で酸素ボンベを置くだけでなく、アウェーチームが滞在するホテルにも酸素供給用の機器を用意するという。(c)AFP/Peter STEBBINGS