【11月3日 AFP】インドネシア・スマトラ(Sumatra)島の辺境にある森林地帯で、オランウータンの新種が見つかったとの論文が2日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された。調査を行った研究者によると、世界で最も絶滅の危機にひんしている大型類人猿だという。

 論文の共同執筆者で、スマトラオランウータン保全プログラム(Sumatran Orangutan Conservation Programme)のディレクター、イアン・シングルトン(Ian Singleton)氏はAFPに対し、「大型類人猿の新種が発表されたのは約100年ぶり」と語った。

「タパヌリオランウータン(Tapanuli orangutan)」と名付けられた新種は、スマトラ島のバタントル(Batang Toru)森林地帯に生息。個体数はわずか800頭前後で、世界で最も絶滅が危惧される大型類人猿だとシングルトン氏は説明している。

 最近までオランウータンには「ボルネオオランウータン」と「スマトラオランウータン」の2種しか存在しないと考えられてきた。だが1997年、スマトラオランウータンの生息地の南に位置するバタントルで、オーストラリア国立大学(Australian National University)の研究チームが周囲から孤立した個体群を確認。以降、これが独立種である可能性が調査されていた。

 人の手で殺された33頭のDNAや頭蓋骨、歯を分析したところ、新種であることが判明し、「Pongo tapanuliensis」との学名が与えられた。外見はボルネオオランウータンに似ており、スマトラオランウータンよりも縮れたシナモン色の毛に覆われているほか、「特徴的な口ひげ」もあるという。

 国際自然保護連合(IUCN)によると、オランウータンの推定個体数は、スマトラが1万5000頭足らず、ボルネオが約5万4000頭。生息数が非常に少ないタパヌリオランウータンは、鉱業や農業の拡大、違法な森林伐採、水力発電ダムの建設計画により生息地が脅かされており、論文執筆者らは早急に保護措置を取る必要があると訴えている。(c)AFP