【11月1日 AFP】保守的な慣習が根強いパキスタンで、頻発する「名誉殺人」の流れを断ち切ろうと新たな法律が施行されて1年になるが、いまだに大勢の若い女性が、家族に恥をもたらしたという理由で親族に殺害されている。

 ソーシャルメディア上の有名人だったカンディール・バローチ(Qandeel Baloch、本名ファウジア・アジーム、Fauzia Azeem)さんが7月に実兄によって殺害された衝撃的な事件は、いわゆる名誉殺人のまん延を浮き彫りにし、殺害者を野放しにしている法の抜け穴をふさぐべきだという要求に拍車をかけた。

 ようやく3か月後に待望の法律が通過し、女性の権利活動家らは歓迎はしたものの慎重に見守った。そして弁護士や活動家らは、その後1年以上を経ても、今も警戒すべきペースで名誉殺人が起きていると言う。

 独立系人権団体「パキスタン人権委員会(Human Rights Commission of Pakistan)」の記録によると、2016年10月から今年6月までの間に少なくとも280件の名誉殺人が発生した。だが、この数字は過小評価で不完全だとされている。

 新法では名誉殺人に対し、終身刑を科している。だが、ある殺害を名誉殺人と定義するかどうかは裁判官の判断による。つまり実行犯は、別の動機を主張しさえすれば罪を免れる可能性があると、首都イスラマバードにあるカーイデ・アザーム大学(Quaid-i-Azam University)ジェンダー学部・学部長のファルザナ・バリ(Farzana Bari)博士は指摘する。

 パキスタンでこれを可能としているのは、キサース・ディーヤ法(同害報復・賠償法、Qisas and Diyat Ordinance)と呼ばれる法律だ。同法の下では加害者が犠牲者の親族に許しを求めることが認められており、特に名誉殺人では便利な逃げ道とされている。

 また裁判制度が入り組んでいるため、警察がしばしば当事者らに賠償金支払による和解を奨励し、複雑な司法制度を一切回避するよう仕向けることもある。