【10月25日 AFP】シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権軍に包囲された町ハムーリア(Hamouria)にある崩れかけた家の中で、マナルさんは鍋を火にかけ、湯を沸かしていた。4人の子どもたちが、母親は料理をしているのだと思い込みながら夕食がないことに気付かないうちに眠りに就いてくれるのを待ちながら。マナルさんの家には食べる物がなかった。

 マナルさんが住んでいるのは、反体制派が支配する東グータ(Eastern Ghouta)。ここでは1100人以上の子どもたちが急性栄養失調に苦しんでいる。政府軍が町を包囲しているため、食料不足によって栄養失調になる危険性がある子どもはさらに数百人に及ぶ。

 人道支援機関は事態が悪化していると警鐘を鳴らしている。内戦6年目に突入したシリアでは今年5月、同政府の同盟国であるロシアとイラン、そしてシリア反体制派を支援するトルコとの合意が成立し、東グータにも7月に「緊張緩和地帯(ディエスカレーション・ゾーン)」が設置された。しかし、爆撃は以前よりは減ったものの、同地域に食料や医薬品、人道的支援が届く新たな方法は確保されていない。

 首都ダマスカス(Damascus)の東郊にある東グータはかつては主要農産地だった。だが2011年3月に反政府運動から始まった内戦以降、東グータへの人道支援はごくまれにしか行われていない。

 反体制派の拠点となったこの地域では、2013年から政権軍が続ける包囲作戦により、食料や医療品が不足し、地元産品や密かに持ち込まれた物資の値段が急騰。数年間にわたる戦闘で町は荒廃し、政府軍の空爆や砲撃で数階建ての建物が倒壊して通り一帯が住めなくなっている。推定40万人の同地域住民への基本的サービスは存在しないに等しい。電気は発電機のみで供給され、水はあっても不衛生なことが多く、病気を媒介する原因となっている。

 人道支援機関の車両が政府の許可を得て同地区に入ったのは今年8月以降で2回だけ。運ばれた援助物資は10万人分にも満たなかった。英国に拠点を置くNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表によると、ロシア部隊は検問所で支援物資を配給したが、2度行ったきりで、それ以降は止めてしまったという。