【10月23日 AFP】物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が95年前に東京に滞在した際、幸せな生活に関する短い自説を記したメモが、エルサレム(Jerusalem)で競売にかけられることになった。

 時は1922年、アインシュタインは講演のため日本を訪問中だった。来日の直前、アインシュタインはノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)受賞を知らされていた。

 日本人の配達人が、帝国ホテル(Imperial Hotel)に滞在していたアインシュタインに1通のメッセージを届けた。配達人がチップの受け取りを断ったか、またはアインシュタインが小銭を切らしていたかは明らかでないが、手ぶらで帰すのを望まなかったアインシュタインは、その場でドイツ語で2つのメモを書いた。

 ドイツ・ハンブルク(Hamburg)在住で配達人の親戚である匿名希望の出品者によると、「もしあなたが幸運なら、このメモ書きは普通のチップよりもずっと価値が高くなるでしょう」とアインシュタインは配達人に話したという。

 メモ書きの1枚は帝国ホテルの便箋に、「静かで質素な生活は、絶え間ない不安に縛られた成功の追求よりも多くの喜びをもたらす」と書かれている。また別のメモは白い紙に「意志のあるところに道あり」と記されている。

 世界最大のアインシュタイン文書のコレクションを擁するエルサレムのヘブライ大学(Hebrew University)の公文書保管人ロニー・グロス(Roni Grosz)氏は、これらのメモが、アインシュタインの高まる名声について自身の思いを反映したものか判断することは不可能だと語る。

 これまで研究者らに知られていなかったこれらのメモは、科学的価値こそないものの、天才の代名詞となっているアインシュタインの個人的思考に光を当てる可能性があるとグロス氏は語る。「私たちが行っているのは、アインシュタイン像を彼の書いたもので描き出す作業です」「このメモはそのモザイクの中の一片です」

 2枚のメモは、アインシュタインがその後に書いた2つの手紙などとともに、競売会社ウィナーズ(Winner's)により24日、競売にかけられる予定だ。(c)AFP