【10月22日 AFP】1980年代から90年代にかけ、中国の多くのスポーツで組織的なドーピングプログラムが行われていたと、同国の医師が告発した。

 政治的保護を求めている薛蔭嫻(Yinxian Xue)氏(79)はドイツ公共放送連盟(ARD)のインタビューに対し、1万人以上のさまざまなスポーツの選手が、国家ぐるみのドーピングに関与していたと主張した。

 薛氏にインタビューしたのは、ロシアにはびこるドーピングを最初に暴き、同国の陸上選手団が2016年のリオデジャネイロ五輪から除外されるきっかけをつくった調査団。

 薛氏は、中国人選手が80年代と90年代の約20年の間に主要国際大会で獲得したすべてのメダルは、ドーピングで汚されたものであり、返還されるべきだと語った。

 1970年代からさまざまな中国代表チームで医師を務めてきた薛氏だが、2012年に初めてドーピングについて非難の声を上げると、息子とともに中国を後にした。

 彼女の故郷、北京(Beijing)では安全性を感じることができないという薛氏は、「1万人以上が関係していたに違いありません」と語った。

「中国の人々はドーピングの正当性を信じており、ドーピングをした人物は、国の名誉を守ることになっていました」

「反ドーピングで国に損害を与え、国を危険にさらした人物は今、刑務所にいます」

 薛氏が働いていた代表チームでは、ドーピングが義務付けられていたという。

「ドーピングを拒否すれば、チームを去らなければなりません。まず、若い選手たちに薬物が使用されました。最年少は11歳でした。私は何もできませんでした」

 薛氏は2008年の北京五輪を前に、中国でのドーピングについて口を閉ざすように警告されたという。

 過去には中国政府から脅されることもあり、自宅の外には警察の車が止まることもしばしばあった。

 政府の役人が北京の自宅アパートを訪れたという薛氏は、「彼らは私に、ドーピング物質のことについて強くくぎを刺しました。主張の撤回を求めたのです。私はそれはできないと応じました」と明かした。

「黙らせたかったのでしょう。夫を亡くした後、スポーツ大会があるたびに彼らは私のところへやってきました」

 ARDは中国オリンピック委員会(COC)や国家体育総局に対し、この件について取材したが、返答はないという。(c)AFP