独自然保護区の昆虫、約30年で4分の1以下に 研究
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【10月19日 AFP】ドイツの自然保護区に生息する飛行昆虫が過去30年間で急激に減少しているとの研究結果が18日、発表された。農業用殺虫剤がその原因となっている可能性があるという。
欧米でチョウやハナバチが姿を消していることはこれまでに多くの文献で報告されているが、米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に発表された今回の研究論文では、1989年以降にドイツ全域で飛行昆虫が4分の1以下にまで減少したことが初めて明らかになった。
昆虫は重要な花粉媒介者であるだけでなく、鳥やその他の小動物の餌となって食物連鎖の中核を担っていることから、研究チームは懸念を示している。
論文の主執筆者で、オランダ・ラドバウド大学(Radboud University)のハンス・デ・クローン(Hans de Kroon)氏は「飛行昆虫がこれほど広いエリアで、これほど急速なペースで減少しているという事実は、よりいっそう憂慮すべき事態」と述べている。
研究チームは今回の研究で、63の自然保護区で昆虫を採集するために粘着トラップを使用し、バイオマス(生物量)を測定、その変化を長期にわたって記録した。
調査の結果、過去27年間で平均76%の減少が認められることが分かった。減少の割合が最も高かったのは夏季の82%だった。
論文の共同執筆者で、ラドバウド大のカスパル・ホールマン(Caspar Hallmann)氏は「これらのエリアはすべ保護区域であり、大半が管理された自然保護区だ。それにもかかわらず、これほどの劇的な減少が起こっている」ことを指摘した。
論文では減少の原因については特定されていないが、多くの自然保護区は農場に取り囲まれているため、農薬が原因となっている可能性があるとされた。
デ・クローン氏は、「生態系全体が食物と受粉媒介を昆虫に依存しているため、昆虫を餌とする鳥や哺乳動物の減少がかつてない状況となっている」と話す。
また、「農薬の使用など、悪影響が及ぶことが分かっている行為については、その行為そのものを減らす必要がある」「さらには、自然保護区の面積を拡大するとともに、農業地域に接する保護区の割合を減らすことに真剣に取り組まなくてはならない」とも述べている。(c)AFP