【10月19日 AFP】先月19日にメキシコで発生したマグニチュード(M)7.1の地震から1か月。この地震により、首都メキシコ市(Mexico City)を中心に369人が死亡し、8000戸以上の建物が損壊または全壊。

 全域にわたって破壊の爪痕が残った同市では、富裕地区も貧困地区も被災したが、その後の住まいの確保は概して、貧富の差によって明暗が分かれている。

 住む場所を失った被災者数に関する公式の統計はないが、現在もおよそ600人が避難所生活を送り、さらに多くの人々が身内や知り合いの家に身を寄せている。

 メキシコ市の中でも裕福な地区、ローマ(Roma)やコンデサ(Condesa)の住民の間では、近隣地区にある住宅の購入・賃貸ラッシュが発生し、不動産バブルが起きている。

 中心部からは家を失った人々が流出し、はやりのレストランやバー、ブティックなどが立ち並ぶコンデサ地区はゴーストタウンのようになっている。これと対照的に比較的地盤がしっかりしている周辺地区では不動産バブルが起き、ある女性コンサルタントによれば、住宅価格の急騰を招いているという。

 多くの企業も移転を検討しており、地元紙エル・フィナンシエロ(El Financiero)が報じている不動産業者のデータによれば、最新の耐震構造を備えた新築オフィスビルの需要は昨年同期から30~40%も急増している。

■「まだ水も出ない」取り残された地区

 一方、中心部から離れた南郊のソチミルコ(Xochimilco)地区などでは、住民が自分たちは政府から忘れられていると訴え、自力でやれることには何にでもすがって苦境をしのいでいる状態だ。

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録され、古代の浮き畑や運河で観光客に人気があるソチミルコ地区では、多くの質素な住宅が損壊または全壊に近い状態にあるが、不動産バブルとは程遠い。

 崩れた家々の前では、舗装されていない通りにテーブルを置いて集まり、つらい現実を振り払おうと陽気に語る住民の姿もみられた。住民たちは窃盗の被害に遭わないよう夜の見回りも交代で行っているが、団結だけですべての問題が解決するわけではない。

「まだ水も出ませんし、電気もようやく復旧したばかりです」と、住民のオルテンシア・フェルナンデス(Hortensia Fernandez)さん(50)は、かつて自宅が建っていた更地で話した。残ったのは机1個と壊れた木の椅子数脚、小さな庭とリンゴの木。所持品を入れた箱には防水シートが掛けてあった。

「私たちみんな、ここで座って、私たちの家を建て直してくれる人が来るのを待ってるんです。ぼろぼろの小屋でもいいから」とフェルナンデスさんは言った。(c)AFP/Yemeli ORTEGA/Yussel GONZALEZ