ナポレオンの流刑地、絶海の孤島セントヘレナ島に初の民間定期航空便
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【10月15日 AFP】何世紀もの間孤立してきた南大西洋(South Atlantic Ocean)に浮かぶ英国領の島、セントヘレナ(Saint Helena)島に14日、民間の定期航空便が就航した。
南アフリカのヨハネスブルク(Johannesburg)から飛来したブラジル製のエンブラエル(Embraer)190型機が着陸する歴史的瞬間を見届けようと、島民約100人が空港に集まった。滑走路ではリサ・フィリップス(Lisa Phillips)総督が笑顔で約60人の乗客を出迎えた。
空港の総工費は2億8500万ポンド(約423億円)で工期は5年。昨年開港する計画だったが、記念式典開催予定日の数週間前になって風が強すぎて離着陸が想定以上に難しいことが分かり、試験飛行と再検討に1年以上かけた末、航空機を当初計画のボーイング(Boeing)737型機からエンブラエル190型機に変更することでようやく定期便就航にこぎつけた。
火山島のセントヘレナ島の面積はわずか122平方キロメートル。アフリカと南米のほぼ中間点に位置している。こうした隔絶された位置にあるために、戦いに敗れたフランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)の流刑地に選ばれ、ナポレオンは1815年から1821年に死を迎えるまでこの島で過ごした。
これまでセントヘレナ島に行くには海路しか選択肢はなく、南アフリカのケープタウン(Cape Town)から英郵便事業会社ロイヤルメール(Royal Mail)の時速15ノット(28キロ)の船で5日かかっていた。
セントヘレナ島の年間平均給与所得は7280ポンド(約108万円)だが、週に1度運航される同島とヨハネスブルクを結ぶ便の運賃は往復で約800ポンド(約11万9000円)。歴史的な第1便に乗るために貯金したという乗客のジャッキー・ウィルソン(Jacqui Wilson)さんは「(南アフリカから)ロンドン(London)への便よりも高い」と話した。
セントヘレナ島と外の世界を結ぶ船セントヘレナ号(RMS St. Helena)は来年退役することになっており、同島はほぼ完全に航空輸送に依存することになる。しかしナポレオンの遺産、珍しい鳥、エキゾチックな植物がある同島が、好奇心あふれる観光客の楽園になるとの期待は大きい。(c)AFP/Beatrice DEBUT