【10月16日 AFP】スペイン北東部のカタルーニャ(Catalonia)自治州が独立を宣言すれば、州内のサッカークラブ、とりわけ世界的にも有名なスペイン1部リーグ、FCバルセロナ(FC Barcelona)に広い影響が及ぶ可能性がある。

 カタルーニャ州議会は10日、独立宣言書に署名はしたものの、すぐに宣言することは保留し、この数十年で最悪の政治危機を解決したいと中央政府に対話を呼びかけている。ここでは同州の各クラブやスペインサッカーが今後数か月で直面する可能性のある問題を考える。

■影響を受けるクラブ

 バルセロナのほかにも、カタルーニャ州のクラブではRCDエスパニョール(RCD Espanyol)とジローナ(Girona FC)もスペイン1部リーグに属しており、同2部にはFCバルセロナB(FC Barcelona B)もいる。

■所属リーグの問題

 スペイン・プロサッカーリーグ機構(LFP)のハビエル・テバス(Javier Tebas)会長は、カタルーニャ州が独立した場合、州内のクラブがリーグに所属し続けることは認めないと繰り返し強調している。

 テバス会長はbeINスポーツ(beIN Sports Spain)で「反乱が成功した場合、われわれはバルセロナ抜きのリーグに向けて作業を進める」と話している。そしてその措置の根拠として、スペインリーグに所属できるのはスペインとアンドラのチームのみという同国のスポーツ法を挙げている。

 一方で法律が変われば、継続参戦の道が開ける可能性はあり、また本当に独立が実行された場合は、会長も今の強硬な姿勢を和らげるのではと多くの人が考えている。バルセロナが脱退すれば、経済的なものはもちろん、リーグが被る損失は計り知れないためだ。

 かつてバルセロナの会長を務め、独立賛成の運動にも参加したジョアン・ラポルタ(Joan Laporta)氏は先月、「バルサ対レアル・マドリード(Real Madrid)の試合は非常に魅力的な商品だ。それを破壊しようというのは政府の過ちだ」と話している。

■現行シーズンの扱い

 独立が成就するまでには長い道のりが待っているが、スポーツ法に詳しいマドリード・カルロス3世大学(Carlos III University of Madrid)の法学博士によると、新憲法が制定されるまでの独立へ向けた移行期間は、スペイン法が維持されるという。

 博士は「(カタルーニャの)各サッカー協会は統一されますが、チームはスペインで戦えますし、選手も代表に入ることができます」との見解を示した。テバス会長も、現在のシーズンが終えられなくなる以上「すぐに切り離すことは考えていない」と話している。

■他のリーグ参入の可能性

 フランス・リーグ1に参戦するモナコ公国のASモナコ(AS Monaco)、イングランド・プレミアリーグに参戦するウェールズのスウォンジー・シティ(Swansea City)などの例があることから、バルセロナはスペインリーグから締め出された場合でも、他国のリーグに参戦できるとのうわさも出ている。

 ところが、バルセロナのような強豪が参戦することにイングランドやフランスの各クラブが賛成票を投じるかと考えると、実現の見込みは薄い。プレミアのアーセナル(Arsenal)を率いるアーセン・ベンゲル(Arsene Wenger)監督は、beINスポーツで「現実的なシナリオだとは思えない」と述べた。

 先の法学博士も、国際サッカー連盟(FIFA)がカタルーニャのサッカー協会を独立した団体と認めるまでには、ジブラルタルやコソボのときと同じように時間がかかると考えており、そしてその認可がなければ、越境リーグの形成に向けた協定を作ることもできない。

 また、カタルーニャのリーグが欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)のような大会に参加したい場合は、こちらも欧州サッカー連盟(UEFA)の承認が必要になる。

 こうした選択肢に魅力を感じなかった場合、バルセロナはスポーツ、財政両面の力を駆使して欧州の他の有力クラブを説得し、まったく別のリーグを結成することを考える可能性もある。

■経済面での影響

 2015年のAFPのインタビューで、テバス会長はバルセロナとレアルのライバル関係を「宝石をちりばめた王冠」だと表現していた。両チームの伝統の一戦「エル・クラシコ(El Clasico)」は常に世界中で最も視聴されるサッカーの試合で、2016-17シーズンのリーグの放映権料を18億ユーロ(約2380億円)に押し上げる大きな要因となった。

 バルセロナ大学(Barcelona University)で経済学を教える教授によると、バルセロナの脱退でリーグは「最低でも2億ユーロ(約264億円)」のテレビ放映権収入を失うとしている。バルセロナが受ける影響はさらに大きくなる恐れがある。クラブは今年9月、今季の収入が過去最高の8億9700万ユーロ(約1186億円)に達する見込みと発表したが、そのうち約4分の1は放映権料が占めている。

 現在は世界最優秀選手を5回受賞したリオネル・メッシ(Lionel Messi)らを擁するバルセロナだが、脱退すれば「世界最高峰の選手たちを引き止めることはできなくなり、中規模のクラブになっていく」という。

■バルセロナの方針

 カタルーニャの強力な象徴であるバルセロナは、これまでカタルーニャの民族自決権を支持する一方、独立に賛成するまではいかないという、政治的な綱渡りを行ってきた。クラブの広報関係者によれば、仮に独立が宣言された場合、クラブは「会員と話し合う」という。

 それでもクラブは「欧州のどこのリーグであろうと、バルサのようなクラブの参加を歓迎しないところはない。スペインリーグを含めてね」と自信を見せている。(c)AFP/Jean DECOTTE/Gabriel RUBIO GIRON