【10月8日AFP】マダガスカルでは今年3月に発生した熱帯サイクロン「イナウォ(Enawo)」の後、同国最大の輸出品であるバニラの価格が生産量減少に対する市場での思惑買いによって数か月のうちに暴騰した。

 世界の市場に出回るバニラのうち約80%はインド洋に浮かぶ島マダガスカルで生産されており、アイスクリームやアロマテラピー、香水、そして高級フランス料理などに使用されている。しかし、バニラ価格の高騰により突然この国に舞い込んできた現金はかえって犯罪を助長しており、またバニラの質低下を招いている恐れがある。

 同国北東部の農村地帯アンパネフェナ(Ampanefena)にあるたった1本だけ舗装された道路で、若者たちは日本製のオートバイに乗って後輪走行をしながら時間をつぶしている。細い体には大き過ぎるカワサキ(Kawasaki)のオートバイに乗る17歳の少年は、「2億アリアリ(マダガスカルの通貨、約157万円)したんだ」と自慢する。父親は「バニラ商売」に携わっており、プレゼントしてくれたのだという。

 マダガスカルでは近年、バニラビジネスが盛況だ。2015年以降、バニラの価格は上昇を続けており、同国のバニラ輸出業者協会(Group of Vanilla Exporters)の会長によると、1キロ当たり600ドル(約6万7000円)から750ドル(約8万4000円)というこれまでにないピークを迎えているという。

 同国では1989年にバニラ市場が開放された後、その価格は乱高下した。2003年に1キロ400ドル(約4万5000円)の高値を付けた後、2005年には1キロ30ドル(約3300円)に暴落。価格はその後、約10年の間、同様のレベルにとどまっていた。

 しかしオーガニック製品の人気再燃や投資家による思惑買い、そしてマダガスカルのバニラ生産地域がサイクロンで被災したことなどから、バニラの需要は同国の供給量である年間1800トンを上回るようになった。

 その結果、バニラ生産地域であるサバ(Sava)地方では、価格高騰による現金の流入で、ほぼ一夜にして町にはオートバイやスマートフォン、太陽電池パネル、発電機、薄型テレビ、派手なインテリア製品などがあふれ返った。