喫煙で肺細胞が変化、がん化への「下地」形成か 米研究
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【9月12日 AFP】たばこの煙に長期間さらされることで肺細胞に経時変化が生じ、細胞がより病気にかかりやすくなるとともに、がん化する下地がもたらされる恐れがあるとの研究論文を、米国の研究チームが11日に発表した。
米医学誌「キャンサー・セル(Cancer Cell)」に掲載の論文は、肺細胞をたばこの煙に長時間さらす室内実験に基づくもので、暴露時間は20~30年来の喫煙者に相当する。
実験開始から約10日後、肺細胞の遺伝子発現に変化が生じ始めた。このプロセスは「後成的変化」として知られている。この変化が、がんの発生率を高めるほど蓄積されるまでには10か月を要した。
論文の主執筆者で、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)がん生物学プログラムの共同ディレクターを務めるスティーブン・ベイリン(Stephen Baylin)氏は「喫煙すると後成的変化の基質が蓄積され、これが肺がんを発症する確率を高めているとする仮説を、われわれは提唱している」としながら、「そのため、喫煙者でないなら、肺がんリスクは非常に低い」と付け加えた。
このような後成的(エピジェネティック)の異常は、正常細胞のがん化を防ぐのを助けるために必要な複数の遺伝子をオフ状態にする。
後成的変化は、遺伝子の基本的なDNA配列の改変(変異)を伴わない。このことは、禁煙を目指す人々にとっての希望が存在することを示唆している。
論文の筆頭執筆者で、米ジョンズホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)の博士課程修了研究者のミシェル・バズ(Michelle Vaz)氏は「元に戻すことがより困難な変異とは異なり、喫煙を特定のタイミングと継続期間でやめることができれば、後成的変化の蓄積に起因すると思われる(疾患の)発症率を低下させるチャンスが得られる可能性があることを、今回の研究は示唆している」と述べた。
「この仮説は、特定の種類の肺がんに関与している回復可能な変化が存在するとするものだ」 (c)AFP