【8月30日 AFP】米南部を襲った大型ハリケーン「ハービー(Harvey)」による経済損失が、420億ドル(約4兆6000億円)に上るとの試算が29日、明らかになった。これは同国を襲ったハリケーンによる損失額の上位5位に入る。ダムや堤防の決壊による被害が広がり、これまで試算されていた300億ドル(約3兆2900億円)から一夜にして大幅に引き上げられた。

 自然災害の影響などを分析するエンキ・リサーチ(Enki Research)の創業者、チャック・ワトソン(Chuck Watson)氏によると、洪水被害はルイジアナ(Louisiana)州に拡大して同州の対応能力を超える事態となっている。

 地元当局は29日も引き続き救助活動に重点を置いていたが、ハリケーンに襲われた地域の被害状況はようやく見えてきた段階で、テキサス(Texas)州や米国経済への打撃は長期にわたるとみられている。

 ワトソン氏によると、「ハービー」による420億ドルの経済損失は、2005年のハリケーン「カトリーナ(Katrina)」の1180億ドル(約12兆9500億円)を大幅に下回る。しかし、2008年にテキサス州とカリブ海地域の一部を襲ったハリケーン「アイク(Ike)」の430億ドル(約4兆7000億円)、2005年に北米大陸を襲ったハリケーン「ウィルマ(Wilma)」の380億ドル(約4兆1700億円)に並ぶ被害額という。

 テキサス州は1兆6000億ドル(約175兆5000億円)の経済規模を誇るエネルギー産業の中心地で、米国の国内総生産(GDP)の9%近くを占めている。米国内での経済規模はカリフォルニア(California)州に次ぐ2番目で、カナダや韓国よりも大きい。

 米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が28日明らかにしたところでは、「ハービー」によるエネルギー部門への影響だけでも今年第3四半期の成長率を最大0.2%減速させる要因になり得るという。

 米国内で発生した多くの自然災害を調査してきたプリンストン大学(Princeton University)の経済学教授によると、長期的には、富裕層は自然災害が発生した地域から逃れる一方で、残った貧困層は経済的困難に直面する傾向にあると指摘している。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、テキサス州のメキシコ湾岸(Gulf Coast)は壊滅状態で、国内の石油精製能力の少なくとも15%が停止に追い込まれたと伝えている。メキシコ湾岸は米国の石油精製能力の約3分の1を占めている。

 ワトソン氏は、働けなくなり収入が途絶える最貧困層にとって、復興に向けた道のりは特に困難だと指摘した上で、「給料をもらえず、負債は膨れ、家屋は破壊され、まぎれもなく人道上の危機が起ころうとしている」と警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Douglas Gillison