【8月29日 AFP】空の旅をいかにして再び快適なものにするか──これは、日常生活でわれわれを悩ますジレンマの一つだが、その答えがナイジェリア人の神経科学者オシオレノヤ・アガビ(Oshiorenoya Agabi)氏(38)によって提供されるかもしれない。

 例えば、空港の手荷物検査の長蛇の列をなくすのはどうだろうか? 危険物を「嗅ぎ分ける」ことのできる特殊な機器が検査の手間を省いてくれるというのだ。

 これは、アガビ氏がCEOを務める米シリコンバレー(Silicon Valley)のスタートアップ「コニク(Koniku)」が研究を進めるニューロテクノロジー機器「コニク・コレ(Koniku Kore)」の利用法の一つだ。このニューロテクノロジー機器のプレゼンテーションが27日、タンザニアで開催のテクノロジー会議「TEDGlobal」で行われた。

 人工知能(AI)の分野では、脳を模倣することのできる機器の開発や、IT起業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏が取り組んでいるような脳内にコンピューターを埋め込む技術の研究が盛んに進められている。しかし、アガビ氏が取り組んでいるのは、研究室で培養されたニューロン(脳の神経細胞)と電子回路とを結合させる方法だ。

 多くの研究者らが、限られた処理能力の従来の半導体を使って研究に取り組むなか、アガビ氏は人の脳に着目した。同氏は脳を「世界最強のプロセッサー」だと説明する。

 スーパーコンピューター1台の処理能力は、人のニューロンわずか204個分だと指摘するアガビCEO。「だとしたらニューロンの複製ではなく、生体細胞そのものを取り出して利用したらどうか? このアイデアは斬新で、結果は驚異的だ」と話した。

 同氏は、遺伝学者や物理学者、生物工学者、分子生物学者などのチームとともに、半導体では特に解決が難しい問題に焦点を当て、研究を進めた。この「解決が難しい問題」とは、揮発性薬品や爆発物、さらにはがんなどの疾病を検知することだ。