【8月25日 AFP】インドの最高裁判所は24日、プライバシー権は憲法で保障される権利だと認める画期的な判断を示した。国民10億人以上の生体認証データを集めた政府のIDシステムは、見直しを余儀なくされる恐れが出てきた。

 インドの憲法ではプライバシー権は明文化されておらず、政府は国民にプライバシーに対する絶対的な権利はないとする立場をとってきた。

 最高裁は判決文で「プライバシーの権利は基本的権利である」「国家または非国家の主体による干渉から個人の内面を保護し、個人に自立した人生の選択を認める権利である」とした。裁判官9人全員一致の意見。

 最高裁は、国民一人一人の指紋や虹彩を登録する生態認証IDシステム「アドハー(Aadhaar)」に対する異議申し立てを受けて、プライバシー権について判断する特別法廷を設置していた。

 アドハーは、総人口13億人を超えるインドに相当数存在する貧困者への給付金の支払いを効率化し、不正行為を減らすことを目的に、任意で申請する仕組みとして始まった。しかし近年は、銀行口座の開設や納税など多くのサービスでアドハーへの登録が必須となっている。

 反対派は、アドハーが基本的なサービスにも活用されているため、プライバシー権が侵害されていると主張。申し立てに関わった弁護士の一人、プラシャント・ブシャン(Prashant Bhushan)氏は「政府にとって大きな打撃になる」と今回の判断を歓迎した。

 判決文ではこのほか、「家庭のプライバシーでは、家族、婚姻、出産および性的指向が保護されねばならない。これらはすべて尊厳の重要な一部である」とも言及。2013年の最高裁判決では英植民地時代にさかのぼる同性愛者同士の性行為禁止が支持されたが、この禁止の見直しにつながるとの見方も出ている。(c)AFP/Alexandre MARCHAND