「託児所でカルト儀式」冤罪で21年服役の米夫婦に補償金3.7億円
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【8月24日 AFP】悪魔的なカルト儀式で児童を性的虐待したという無実の罪を着せられ、21年間も獄中生活を送る羽目になった米国人夫婦が23日、テキサス(Texas)州から補償金340万ドル(約3億7000万円)を受け取った。数か月前に検察が2人の冤罪(えんざい)を認めていた。
託児所を経営していたダン・ケラー(Dan Keller)さんと妻フラン(Fran Keller)さんは1991年、子どもたちを虐待し、赤ちゃんの手足を切断したりペットを痛めつけたりする邪悪な儀式を行っているとして起訴され、全米を騒がせた一大事件の渦中の人となった。
しかし、当局はその後、虐待されたと証言した児童らが不適切な取り調べを受け、誤った記憶を想起させられていたと認めた。当時、全米では悪魔崇拝者が子どもたちを食い物にしているという見解が広く信じられ、恐怖感が膨れ上がっていた。
児童らの体に虐待の証拠を発見したと主張していた内科医も、2013年に児童1人の負傷原因を誤診したと認めた。
ケラーさん夫婦は2013年に釈放されたが、昨年6月に検察がようやく無罪を宣告するまで疑いが完全に晴れることはなかった。
テキサス州法では、冤罪の被害者には刑務所で過ごした1年につき8万ドル(約870万円)の補償金を受け取る資格があると規定している。ケラーさん夫婦の代理人を務めるキース・ハンプトン(Keith Hampton)弁護士はAFPに対し、夫婦は23日に補償金340万ドルを受け取ったことを明らかにした。
妻フランさんは22日、テキサス州が補償金を支払うとの連絡を電話で受け、報道カメラの前で泣き崩れた。地元紙オースティン・アメリカン・ステーツマン(Austin American Statesman)によると、釈放後のケラーさん夫婦は高齢なうえ事件の影響で定職に就けず、貧しい生活を送ってきたという。
「これで、私たちは社会保障の給付金に頼って生活を切り詰める心配も、請求書の支払い遅れの心配もしなくてよくなった。本当の意味で自由になれる。生活を始めることができる。――悪夢は終わった」とフランさんはステーツマン紙に語っている。「本音を言えば、州政府からの謝罪が欲しい。でも、謝罪の言葉はもらえないだろうから、これで十分だろう」
地元紙テキサス・トリビューン(Texas Tribune)によるとテキサス州では1991年から2016年半ばまでに、冤罪で有罪となった101人に計9350万ドル(約102億円)を支払っている。(c)AFP