遺伝子編集でイヌの筋ジス改善、「治験への道開く」 国際研究
このニュースをシェア
【7月26日 AFP】遺伝性疾患「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」を発症したイヌの症状を、遺伝子編集技術を用いて改善させることに成功したとの研究結果が発表された。筋力を低下させ、寿命を縮める疾患のDMDは、人の場合では、出生男児5000人に1人の割合で発症する。
国際研究チームが25日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した論文によると、DMDを発症したイヌに治療を1回施したところ、症状が2年間抑えられたという。
大型哺乳動物の治療の成功は、人のDMD患者の治療法開発に向けた大きな一歩となる。研究チームは今回の成果を「ヒト臨床試験への道を開く」ものとしている。
DMDは、健康な筋肉の維持に必要なタンパク質「ジストロフィン」の生成が遺伝子変異によって妨げられることで発症する。
研究チームは今回、イヌのジストロフィン発現を回復させるために、新しいタイプの遺伝子導入療法を開発。短縮型のジストロフィン遺伝子「マイクロジストロフィン」をDMDのイヌに注入した。
ジストロフィン遺伝子は人の体内における最大の遺伝子の一つで、その長さは230万塩基対に及ぶとされる。しかし、その大きさから、これまでは病原性を取り除いた空のウイルスを「運び屋」として使い、修正した遺伝子を患者に届けることが難しかった。
今回の治療を施したイヌは「筋機能の顕著な回復が認められ、修正遺伝子の注入後2年以上にわたって臨床症状が安定している」と、研究チームは声明で述べている。
DMDを発症した男児の場合、生後1年以内に筋力の低下が現れ、15歳までに車いす生活を余儀なくされるケースが多い。また、筋肉の消耗や呼吸および心臓の障害などを引き起こし、患者の大半が40歳代までに亡くなるとされる。(c)AFP