【7月24日 AFP】中国で、親を亡くした12歳の少年2人がおりの中で総合格闘技(MMA)を戦う動画がソーシャルメディア上で拡散し、波紋を呼んでいる。

 報道によると、同国南西部の四川(Sichuan)省成都(Chengdu)にある総合格闘技クラブでは、親を亡くした幼い子ども数百人を養子とし、養育するとともに格闘家としてのトレーニングを受けさせている。

 物議を醸したのは中国の民間動画ストリーミングサイト「梨視頻(Pear Video)」で配信された短いドキュメンタリー動画で、小学生ほどの年代の少年2人が八角形の鉄製のおりの中で激烈な戦いを繰り広げる様子が捉えられていた。一方の少年は相手の少年をノックダウンすると、マット上でうずくまる相手の頭部や体をさらに何度も殴りつけている。傍らではビキニのトップスとジーンズのショートパンツを着たモデルたちが声援を送り、マイクを持った男性が少年たちは「自らの運命のために戦っている」と叫んで観衆をあおっていた。

 ドキュメンタリーの中で総合格闘技クラブの創設者は、孤児を管轄する民生部の地方支所が子どもたちを連れてきたと語っている。またクラブの子どもたちの大半は、チベット族を含む中国の少数民族の出身だという。

 国営紙・新京報(Beijing News)は、このクラブが児童を搾取しているとして非難し、厳しいトレーニングを受けたり、激しい試合で争ったりしている子どもたちが、法に基づいた教育を受ける権利を享受しているのだろうかと疑問を呈した。

 一方、中国版ツイッター(Twitter)の「ウェイボー(微博、Weibo)」ではこの問題について激論が交わされ、あるユーザーは「未成年者を勧誘し、報酬を奪いつつ、興行に出演させること、しかも暴力的な興行に出演させることは違法だ」と批判した。

 だが別のユーザーは、このクラブがなければ、少年たちは路頭に迷い、犯罪に手を染めるかもしれないと擁護した。ドキュメンタリーの中である14歳の少年は、安全でしかもきちんと食事ができて幸せだと述べている。この少年は「食べ物、服、住むところ、何でもある。ここの食事は(自分の家よりも)ずっとましだ。家ならばジャガイモしか食べられないが、ここには牛肉も卵もある」と語った。

 2015年末時点での中国の孤児は50万人とされ、このうち20%以下の子どもは国が養育を受け持ち、わずか5%が養子となっているが、その他の子どもたちについては定かでない。(c)AFP