【7月21日 AFP】国連(UN)の世界保健機関(WHO)は20日、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の新規感染と死者数の増加、治療費用の急増を防ぐために、世界の国々はAIDS治療薬に対する薬剤耐性の拡大に歯止めをかける必要があると警鐘を鳴らした。

 WHOによると、調査を行ったアフリカ、アジア、中南米の11か国のうち6か国で、AIDSを引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して抗レトロウイルス治療を開始した患者の10%以上で、最も広く使われているAIDS治療薬の一部が効かないHIV株への感染を確認したという。

 ウイルスが薬剤耐性を持つようになる可能性があるのは、患者が処方された薬剤の用量を正しく服用していない場合だ。

 薬剤耐性ウイルスは、他人から直接感染する恐れもある。

 WHOのテドロス・アダノム(Tedros Adhanom)事務局長は、「抗菌薬剤への耐性は、世界の保健と持続可能な発展にとってより深刻な課題の一つとなっている」と述べ、また「2030年までのAIDS撲滅という世界目標を達成するためには、HIV治療薬に対する耐性水準の上昇に積極的に対策を講じていく必要がある」と指摘した。

 WHOは世界の国々に対して、薬剤耐性が過剰に高くなった場合は第一選択肢の代替薬に切り替えるよう推奨している。

 最も一般的に用いられる薬剤が効かない場合には、さらに高価で、入手困難となり得る薬剤を試す必要がある。

 数理モデルによると、何も対策を講じなければ、今後5年間で新規感染者が10万5000人、死者が13万5000人増える上、治療費用も6億5000万ドル(約730億円)増加する恐れがあるという。

 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)のマライケ・ベインロクス(Marijke Wijnroks)氏は、薬剤耐性はその現状に歯止めがかからなければ、AIDS防止活動の「重大なリスクとなる」ことを指摘している。(c)AFP