【7月20日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権発足から20日で6か月。トランプ氏はこの半年の間、大幅な軌道修正がなければ政権崩壊につながるようなスキャンダルと無秩序と怒りに見舞われてきた。

 歴代米国大統領は誰もが、ホワイトハウス(White House)が制御不能な状態に陥りかねない危機に襲われている。

 エーブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)大統領は悲惨な南北戦争(Civil War)をくぐり抜け、ビル・クリントン(Bill Clinton)大統領はスキャンダルをめぐる調査で屈辱を味わった。また、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は甚大な被害を出した石油流出事故への対処に5か月を費やした上、経済の立て直しにさらに長い時間を取られた。

 しかし、トランプ氏が就任後6か月間に経験したほどの怒りを呼び起こし、多くの危機に直面した大統領はほとんどいない。

 米プリンストン大学(Princeton University)のジュリアン・ジライザー(Julian Zelizer)教授(歴史学)は「初日からスキャンダルにのみ込まれたことは好ましくないし、重要法案をまったく成立させられていないことも好ましくない。これほど支持率が下がることも、共和党員の離反の恐れがあることも、どれも望ましいことではない」と指摘する。

 トランプ氏は1月20日、大手を振って大統領に就任し、壊れた米政界を立て直せるのは、自身のような有能なビジネスマンだけだと豪語した。だがこの約束は陳腐化する一方のようだ。

 ホワイトハウスの人手不足、技量不足は解消されず、新たに優秀な人材を招き入れることもできずにいる。現職員らは、疲れ切り、士気を失っていることを認めている。

 トランプ氏が掲げた政治公約はすでに粉砕されている。国境の「壁」が築かれることも、北米自由貿易協定(NAFTA)が破棄されることもなく、イランとの核合意は健在で、医療保険制度改革(通称オバマケア、Obamacare)法はまだ撤廃されていない。

 トランプ氏は既に終わった選挙戦から抜け出せずにおり、報道機関や判事、自身が率いる共和党、野党の民主党、自ら解任したジェームズ・コミー(James Comey)前連邦捜査局(FBI)長官に対するけんか腰の発言を繰り返している。

 さらにその間、選挙戦でヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補に勝つためにトランプ氏の親族や側近がロシアから情報提供を受けようとしたとの指摘を裏付ける証拠が、一つ、また一つと出てきている。

 明るい面もあった。「カリフ制国家」を自称するイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」はイラクのモスル(Mosul)でほぼ壊滅し、「首都」と位置付けるシリアのラッカ(Raqa)でも包囲されている。また、環太平洋連携協定(TPP)離脱という公約を果たし、連邦最高裁判所判事に保守派のニール・ゴーサッチ(Neil Gorsuch)氏を起用する人事も実現した。

 しかし、トランプ氏が勝ち得たものはごくわずかだ。ジライザー教授は「この6か月が成功だと見てはいないし、成功だという主張は私にとっては理解し難い」と指摘する。