【7月16日 AFP】アフリカ大陸北部の砂浜に引かれた数十メートルのプラスチック製のひもは、モロッコとスペインのごく小さな飛び領土ペニョンデベレスデラゴメラ(Penon de Velez de la Gomera)とを隔てる世界で最も短い国境の一つだ。

 ペニョンデベレスデラゴメラは、モロッコ北部の沿岸につきでた小さな半島で、16世紀からスペインが軍事基地を置いている。

「そのプラスチック製のひもに近づいてはだめだ!」地中海(Mediterranean Sea)に面した丘にあるトーチカからヘルメットをかぶったモロッコ人兵士が叫んだ。兵士は低い声で「向こうからプラスチック弾で撃たれるかもしれないぞ」と忠告し、トーチカへと戻っていった。

 モロッコ北部の沿岸にはスペインが領有を主張する飛び地がペニョンデベレスデラゴメラを含めて7か所ある。

 最もよく知られているのが、要所のジブラルタル海峡(Strait of Gibraltar)を望むセウタ(Ceuta)とそのさらに東方にあるメリリャ(Melilla)だろう。ほかにも複数の小島がスペインの統治下にありスペイン軍が駐屯しているものもある。

 そうした飛び領土の一つペレヒル島(Perejil、モロッコ名:レイラ島、Leila)では15年前、モロッコ軍兵士が一時的に200メートル沖合の岩礁を占拠する事態が起き問題となったことがあるが、ペニョンデベレスデラゴメラでは「スペイン人との間に深刻な問題は何もない」と、スペイン軍基地から目と鼻の先にあるモロッコ側の集落バデス(Bades)の住民男性は言う。

 かつてバデスは欧州とモロッコの王都フェス(Fes)とをつなぐ活気ある港町だったが、もはやその面影はない。

 別の住民は「ここには何も残っていない。まるでわれわれはモロッコ人でもスペイン人でもないかのようだ」とこぼした。(c)AFP/Herve Bar