貧しい人々も平等に、でも平等すぎはだめ? 研究
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【7月11日 AFP】人は経済的な格差や不平等さに大きな嫌悪感を示すが、その一方で社会的なヒエラルキーは変えたくないという矛盾する感情により、こうした「思いやり」の気持ちが影をひそめるとした研究論文が10日、発表された。
このことは、貧しい人々を支援したいとする大きな意思があるにもかかわらず、社会の不均衡さが根強く残っている理由を説明するものかもしれないと、英科学誌「ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア(Nature Human Behaviour)」に掲載された論文は指摘している。
研究者らが行った実験では、被験者らは見知らぬ人の間で不平等に分けられたお金を再分配するよう求められると、最悪の格差を解消すべくお金を移動させはしたものの、所有額における形勢の逆転を生じさせることはしなかった。この結果について論文では、被験者らが「勝者が敗者に、敗者が勝者に」なることを避けたと結論付けている。
これまでに発表された多くの研究でも、概して人々は社会的な不平等に大きな不快感を覚えるとの結果が示されている。
論文を発表した米ニューヨーク(New York)のバッサー大学(Vassar College)の研究者らは、インドや中国、米国の他、現代社会から孤立して生活するチベットの少数民族など、異なる文化的背景を持つ成人と子どもら1000人以上を対象に調査を行った。
被験者らには、2人の人物とそれぞれの前に硬貨を積み上げた画像を複数見せた。一方の硬貨は常にもう一方よりも高く積まれている。そして、より多くの硬貨を持っている人物の方からもう一方に、あらかじめ決められた一定枚数を移したいかどうかを尋ねた。
すると、硬貨の少ない方により多くの硬貨が積まれて人物の立場が逆転することになるケースでは、被験者らは硬貨の移動をしたがらない傾向がみられた。
チベットの少数民族では、この立場の逆転は特に嫌われた。子どもでは、4歳以降で不平等を嫌う向きがみられたが、その数年後には立場の逆転に抵抗を示すようになった。これが示唆しているのは、社会におけるこのような規範が、人々が生きていく中で構築されているということだろう。
人がこうした態度をとる理由について、研究チームは、それが「生存問題」と関連していると推測する。多くの動物が、「群れの中での争いを減らすため」確固たる上下関係を敷いているのと同じと説明している。
また、ヒエラルキーが、それぞれ個々人の中にあるストラクチャーへの心理的ニーズを満たし、その一方で集団という観点では、それは協力関係を増強するものでもあることも指摘する。
こうした人の心理作用を理解することは、「ヒエラルキーを乱す」政治的改革を人々が模索し、そこで生じる衝突を分析する上で重要であると研究チームは述べる。
これについては、バラク・オバマ(Barack Obama)前米大統領政権下で成立した、医療保険制度改革法(Affordable Care Act)における医療支援の拡充に対し、「一部の人々による不当な『列への割り込み』」を許すことになるとして、比較的裕福な中間層が反対したことを例に挙げた。(c)AFP/Mariëtte Le Roux