【7月14日 AFP】ヒマワリ畑やトウモロコシ畑が広がるブルガリア南部は700万年前、現在のアフリカのサバンナにそっくりだった。そこにはキリンやガゼルが生息していたばかりか、人類最古の祖先が存在していた可能性もあるという。これまで人類の起源はアフリカにあるとされてきた定説を覆すものだ。

 そこである小さな研究チームは、ブルガリアで人類の起源の証拠を発見しようとしている。6月の晴れた日、彼らはルプキテ(Rupkite)村近くにある干上がった川床の粘土から、極めて慎重に化石を発掘していた。

 この発掘の発端となったのは2002年。地元のアマチュア古生物学者、ペタル・ポプディミトロフ(Petar Popdimitrov)さん(76)の当時5歳だった孫が、根が3本ある歯の化石のようなものを発見した。

「全体が青みがかった灰色をしていた。そしゃく面を中心に、ひどくすり減っているように見えた。私たちは動物の歯だと考えた」と、ポプディミトロフさんはAFPに語った。「だがその夜、歯科医をしている義理の息子が、それはヒトの歯かもしれないと言ったんだ」。彼の指摘はある意味、当たっていたとも言えよう。それは人類が類人猿から枝分かれした場所がアフリカではなく、地中海東部だったことを証明する可能性を秘めた極めて重大な発見だった。

 ポプディモロトフさんは2007年、ブルガリア国立自然史博物館(National Museum of Natural History)のニコライ・スパソフ(Nikolai Spassov)教授とフランス国立自然史博物館(Musee National d'Histoire Naturelle)のドニ・ジェラーズ(Denis Geraads)氏にその歯を見せた。

 それから10年間、スパソフ教授と独テュービンゲン大学(University of Tuebingen)のマレーン・ベーメ(Madelaine Boehme)氏率いるチームは、この歯がギリシャ・アテネ(Athens)近郊で1944年に見つかった顎骨と一致するという説を唱えてきた。第2次世界大戦(World War II)中、掩蔽壕(えんぺいごう)を掘っていたドイツ兵によって発見されたこの顎骨と、ブルガリアで歯が発見された地域の動物相に関する新研究の結果、研究チームは大胆かつ賛否両論を呼ぶ説にたどり着いた。

 それは顎骨と歯はいずれも「グラエコピテクス(Graecopithecus)」という生物のもので、この生物はヒト族(ホミニン:ヒトとその直系の非類人猿祖先の総称)だとする結論だった。研究者らは、グラエコピテクスが後になってからアフリカに渡ったという仮説を立てている。