動画:「コスプレ」で狙う地方活性化、300人が秩父に集結
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【7月10日 AFPBB News】大きなスーツケースや小道具がのぞくリュックサックを抱えた若者たちで、西武秩父線の車両はにぎわっていた。都会の日常から遠ざかりながら、互いの写真を見せ合い、和気あいあいと談笑する彼らが向かうのは、埼玉県秩父郡横瀬(Yokoze)町だ。
6月下旬、人口約8500人のこの町で、300人を超える参加者が集まるコスプレイベントが開かれた。最寄りの芦ヶ久保(Ashigakubo)駅でぞろぞろと下車した人だかりは、メインの会場である廃校舎「旧芦ヶ久保小学校(Former Ashigakubo Elementary School)」へと連なっている。校舎内で持参した衣装に着替えてメークし、アニメや漫画などのキャラクターに変身すると、撮影会の始まりだ。
■廃校舎や自然と一緒に「コスプレ撮影」
イベントは2015年6月から始まり、今回が7回目。当初は、横瀬町観光・産業振興協会などが主導したが、現在は民間の撮影スタジオ「ブーティ(Booty)」が主催。今も横瀬町振興課や地元住民などの協力を得ながら、初夏、秋、冬と年に3回イベントを開いている。今回は、廃校舎の他、アジサイが咲く「農村公園(Noson Park)」や地元のレジャー施設「小松沢レジャー農園(Komatsuzawa Leisure No-en)」などで撮影が行われた。
コスプレーヤー(cosplayer)たちは、季節や場所に合わせてキャラクターを設定し、イベントに訪れる。ブーティの担当者、布施圭祐(Keisuke Fuse)さんは、「スタジオでは作り込んだ作品の撮影が多いが、外だと自然との撮影ができる。季節の花をきっかけに、他のコスプレーヤーと一緒に撮影するなど、交流も楽しめる」と話す。
また、コスプレ姿のまま、近隣の協力店での買い物や食事を楽しめるのもイベントの醍醐味(だいごみ)。普段は限られた場所でコスプレを楽しむ参加者にとって、衣装のまま地域観光も楽しめる点が魅力だという。
受け入れ側の地元施設からも喜びの声が上がる。昨年から協力を始めた道の駅「果樹公園あしがくぼ」の常木孝宏(Takahiro Tsunegi)さん(32)は、「たくさんコスプレーヤーの方が来て、食事をしてくれて、好評だった。他のお客さんもコスプレを見て珍しがるわけでもなく、割となじんでいる」と話す。
横瀬町振興課の小泉博(Hiroshi Koizumi)さんは「最初はびっくりされていたと思うが、若い人が来てくれるのでいいねという反応が大半」と町の反応を捉える。
■「アニメ」が新たな観光資源に
町では開催当初から徐々に受け入れ体制を作ってきた。初めは町管轄の廃校舎のみを活用し、その状況をみて、道の駅の河原などでも撮影を許可するなど、少しずつ町民の目に触れる形で開催場所を広げ、住民の協力を仰いできたのだという。「コスプレーヤーの皆さんのマナーもしっかりしているので、今後イベントを増やしていくにあたり、安心感もある」と小泉さん。
2015年放送「心が叫びたがっているんだ。(The Anthem of the Heart)」などの秩父市を舞台にした人気アニメに、横瀬駅や大慈寺(Daiji Temple)など、町の風景が多く登場することから、横瀬町はもともとアニメファンがゆかりある場所を訪れる「聖地巡礼(Pop-culture tourism)」の場所としても知られている。そのため、イベント以外でも衣装を着た人を見かけることも多く、町の人にとってもコスプレは見慣れた光景となりつつある。