【7月9日 AFP】今度誰かがブラジル人の学生、マイラさん(23)をトランスジェンダー(性別越境者)であることを理由にいじめたら、彼らは思いがけず痛い目に遭うだろう──。

 マイラさんは、イスラエルで考案された実戦的な格闘術「クラブマガ」を習うグループの新メンバーだ。グループは、トランスジェンダーやトランスセクシュアル、性的マイノリティーらで構成されている。

 参加者たちはレッスンを受ける理由について、自らの身を守り、暴力を受けないようにするためだと話す。ブラジルでは、暴力行為が日常的に起きるためだ。

「常に危険を感じる。いつ誰が理由もなく私に向かって石を投げたり、背後から襲いかかってきたりするとも限らない」と語るマイラさん。自身のグループを「ピラニアチーム」と呼ぶその他のメンバーらと同様に、マイラさんもラストネームを明かさなかった。

 クラブマガは、イスラエル軍のために開発された格闘術で、誰でも相手と互角に戦えるよう指導が行われている。

 柔道やボクシングをはじめ、あらゆる格闘技の要素を取り入れたクラブマガでは、現実に起こり得る状況を想定し、相手と対峙することを受講者らに教える。実戦を想定していることから、日用品が武器として使われることもある。

 リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)市内の流行発信地であるラパ(Lapa)地区のジムでは、Tシャツとショーツ姿の初心者たちの横で、道着に身を包んだ経験者たちが腹筋や腕立て伏せでウォーミングアップを行っていた。

 独ベルリン(Berlin)に本部を置く非政府組織(NGO)の「トランスジェンダー欧州(Transgender Europe)」によると、ブラジルは殺害されるトランスジェンダーの数が世界で最も多い国の一つで、2008~16年には900人が殺害されている。これは、全世界で報告された2264人の半数に近い。