【6月30日 AFP】英国から中国に返還されて20年という節目を迎える香港(Hong Kong)では、年齢、経済的地位、政治信条の違いによって、人々が抱く感情も、怒り、悲観、誇らしさ、祝賀気分とさまざまだ。

 高度な自治が保障されている香港では今なお、中国本土にはない自由があるが、ここ数年は社会不安も増加している。なかでも、中国政府の介入との見方もある政治的な動きに対しては、民主改革を求めるデモや独立運動もみられるようになってきた。また若者の間では、不動産価格の高騰や低賃金による不満もくすぶっている。

 それでもなお、香港はチャンスの街であり、中国の一部である限り、安定と安全がもたらされるはずとの考えを持つ人も少なくない。

 1997年7月1日に中国に返還されてから20年がたつ香港で、3人の地元住民が夢と希望、将来に対する不安を語った。

■雨傘運動の最年少逮捕者、闘う20歳の学生活動家

 地元である太子(Prince Edward)エリアの公園で話をしてくれたのは、1997年生まれのチョウ・ホイ(Chau Ho-oi)さん(20)。父親は音楽教師、母親は会社員。幼い頃の夢は警察官になることだった。

 だがチョウさんは3年前、香港選挙制度の民主化を求める大規模デモ「雨傘運動(Umbrella Movement)」の参加者の中で最年少の逮捕者となった。

「警察官になるのは正しいことだと思っていた。でも、正義のために力を尽くす方法は他にもあると今では思っている」とチョウさんは語る。

 現在は、中国政府に対抗する若い活動家らの一人で、香港の雨傘運動の学生リーダーだった黄之鋒(ジョシュア・ウォン、Joshua Wong)氏が共同で立ち上げた政党「香港衆志(デモシスト、Demosisto)」の活動にも関わっている。

 中国に対する愛国教育の導入に抗議する学生デモが行われた2012年、チョウさんは初めて、若者にも物事を変える力があると思うようになったという。

 以降、学生運動の組織に飛び込み、2014年のデモにも参加した。しかし「政府は、若者を敵対勢力と見なしている」と語り、当局は若者の関心事など眼中にないと続けた。

 同居している両親は、自分なりの生き方を見つけることを認めてくれているという。友人の中には、政治に無関心な人もいれば、民主主義が進展しないことにいら立つ人もいる。そんなチョウさんの望みは、活動家として闘い続けることだ。

「自分には、今の社会を変える力があると思っている。私たちはまだ絶望する場所には来ていない。希望は自分たちで生み出さないといけない」