【6月28日 AFP】進化論を提唱した英国の自然科学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)は、南米パタゴニア(Patagonia)で発見した化石の正体を突き止めることができず、化石を友人の著名な古生物学者、リチャード・オーウェン(Richard Owen)氏に送った──。しかし、この化石にオーウェン氏、そして多くの専門家らが長きにわたり頭を悩ませることになった。

 ダーウィンが「今まで発見された中で最も奇妙な動物」と呼んだこの生物「マクラウケニア・パタコニカ(学名:Macrauchenia patachonica)」だが、このほどついに進化系統樹上で位置づけられることになった。英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications、電子版)に27日、研究論文が掲載された。

 論文の上席著者で、独ポツダム大学(University of Potsdam)教授のマイケル・ホフライター(Michael Hofreiter)氏は、「その骨格は彼の知るどの骨とも異なっていた」と述べている。

 AFPの取材に同教授は、「足はやせたサイのようで、頭の形はサイガアンテロープ。そして(胴体は)こぶのないラクダのようだった。想像してみたまえ」と話した。

 名前の一部が「長い首のリャマ」を意味するマクラウケニア・パタコニカは、長い弾性のある鼻を持ち、その鼻孔は高く頭蓋のちょうど眼の上にあった。

 この奇怪な生物は体重400~500キロで、平坦な土地に生息する草食動物だった。生物学者と分類学者らはその正体をめぐって2世紀近く論争を続けてきた。しかし、その身体的特徴と対象となるDNAサンプルの欠如を理由に、これまでマクラウケニア・パタコニカが実際にリャマと関係があったのかを判断することはできていなかった。

 今回の研究では、チリ南部で発見された化石から採取したミトコンドリアDNAを調べ、絶滅したこの哺乳動物の正体に迫った。そして全遺伝情報のほぼ80%を解明し、マクラウケニアを進化の時系列上に位置付けることが可能となった。結果、マクラウケニアはウマ、サイ、バクを含む奇蹄目に近い分類群であることが分かった。

 研究によると、その分類群は約6600万年前、巨大小惑星が地球に衝突したのとほぼ同時期に、現代の奇蹄目へと続く系統から枝分かれしたという。マクラウケニアは、更新世後期の2万年~1万1000年前まで生息したとみられている。(c)AFP/Marlowe HOOD