【6月15日 AFP】ポーランドのベアタ・シドゥウォ(Beata Szydlo)首相が14日、ナチス・ドイツ(Nazi)のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所跡で行われた追悼式典に出席した際、政府の反移民・難民政策を擁護するとも取れる発言をしたとして非難を浴びている。

 右派政権を率いるシドゥウォ首相は、ナチスによるポーランド人のアウシュビッツ収容開始から77年を迎えて開かれた追悼式典で、「困難な時期にあるわが国においてアウシュビッツは、市民の安全と命を守るためにはあらゆる手を尽くさねばならないという偉大な教訓だ」と述べた。

 この発言に先立ち、欧州連合(EU)は13日、加盟国が分担して難民を受け入れる計画の履行を拒否したとしてハンガリー、ポーランド、チェコに対し法的措置に踏み切ることを明らかにしている。一方、ポーランドのラファル・ボヘネク(Rafal Bochenek)政府報道官は同日、EUの難民割り当て計画は加盟国の安全保障上の「脅威」になると述べ、欧州でのテロ攻撃と難民や移民を関連付けるこれまでのシドゥウォ首相の過激な主張に同調していた。

 シドゥウォ首相のアウシュビッツでの発言を受け、ポーランド出身で首相経験もある欧州理事会(European Council)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)常任議長(EU大統領)は14日、「ポーランドの首相がそのような場所で、そのような発言をしては絶対にいけない」とツイッター(Twitter)上で批判した。

 また、ポーランドの中道政党「現代ポーランド(Nowoczesna)」のカタジナ・ルブナー(Katarzyna Lubnauer)党首は、「アウシュビッツの残虐行為を利用し、ポーランド人が難民を恐れるよう仕向けている」と述べ、より明確にシドゥウォ首相を非難した。

 ポーランドのツイッター上では非難の声が広がっており、ジャーナリストや有識者もシドゥウォ首相の真意を疑問視している。しかし、ボヘネク報道官は、演説の中での発言であり文脈を無視した批判だと反論している。(c)AFP