【6月15日 AFP】英ロンドン(London)西部の24階建て高層住宅で14日未明に発生した大規模火災で、近隣住民らは、安全性への懸念が以前からあったにもかかわらず、富裕層が住む地域ではないため無視されてきたと、憤りをあらわにしている。

 火災が起きたグレンフェル・タワー(Grenfell Tower)の入居者団体の元会長、ダミアン・コリンズ(Damian Collins)氏はAFPの取材に対し、住民らは昨年完了した同タワーの大規模改装の対処について地元議会に苦情を申し立てていたと説明。「私たちは、実際に悲劇が起きないと皆の目は覚めないし、ビル管理者が責任を問われることもないと言っていた」と述べた。

 コリンズ氏によると、入居者らは建物内の火災非常口が足りないことを特に懸念していた。また、暖房と照明システムにも欠陥があり、改善を求める2015年の請願書に住民の90%が署名したが、それも無視されたと述べた。

 グレンフェル・タワーは1974年建築のコンクリート製高層ビル。昨年、総額870万ポンド(約12億円)の改装を終えたばかりで、住民はこの改装の際に使われた新たな外装材が火事を広げた原因となったと批判している。

 近隣住民の男性(46)は、同地域の住民は自力に頼ることが習慣になっていると語る。男性は住民が過去に何度も苦情を申し立てていたことを指摘し、「もしこれが(高級地区の)ナイツブリッジ(Knightsbridge)近くで起きていたら、既に解決し、問題にはならなかっただろう」と述べた。

 この建物は公営住宅として造られた。大部分が高級地区となっているケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)内の労働者階級地域に位置するが、同地域は急速に高級化している。

 住民団体「グレンフェル・アクション・グループ(Grenfell Action Group)」のメンバーで、自身も長い間苦情を申し入れ続けていたというエディーさん(55)はAFPの取材に対し、タワーの基礎構造に特に懸念を抱いていたと説明。この構造により、消防車の通行が阻害されたと主張した。

「これは大量殺人であり、責任者はこのコミュニティーに対する扱いについて、裁判にかけられるべきだ」(エディーさん) (c)AFP/Alice RITCHIE/William EDWARDS