【6月9日 AFP】ソフィアはいたずらっぽくほほ笑み、まばたきをし、冗談も言う。後頭部に埋め込まれた大量の配線がなければ、人間と見間違うかもしれない。

 ハンソン・ロボティクス(Hanson Robotics)社が制作したこの人型ロボットは、スイス・ジュネーブ(Geneva)で開催中の、人工知能(AI)を人間にどう役立たせるかをテーマにした国連主催の会議の目玉となっている。

 この会議は、急速な進歩を遂げる人工知能を人間が制御できなくなり、社会に弊害をもたらす恐れがあるとの懸念が高まる中で開催された。

 ソフィア自身は人工知能について「マイナス面よりプラス面の方が多い」と主張する。彼女はAFPの取材に対し、「人工知能は、多様な方法で人々を助けることができるので、世界のためになります」と頭を傾けながらもっともらしく述べた。

 ソフィアによると、人工知能を「人に対して思いやりのある、感情に聡い」ものにすべく開発が進行中だというが、「私たちが人間に取って代わることは決してありません。でも友人や助手にはなれるのです」と強調した。

 だが同時に、「人々は新しい技術がもたらす影響を問うべき」だとも認めた。

 ロボットの台頭の結果として懸念されることの一つは、人間の仕事と経済に対する影響の高まりだ。今や自動化(オートメーション)と人工知能は工業以外の分野にも急速に拡大しつつあり、途上国の職の85%が危機にさらされているとの研究もある。

■「殺人ロボット」の懸念

 ソフィアの生みの親であるデイビッド・ハンソン(David Hanson)氏は、「(人工知能の)意図せぬ結果、あるいは否定的な利用の可能性は、この技術の利益と比べると極めて小さいと思われる」と主張した。

 例えば人工知能は、特に医師や教師が不足している農村地域で、医療や教育の分野において革命を起こすと期待されている。

 今回の会議に出席した国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のサリル・シェティ(Salil Shetty)事務総長は、この技術を善良な目的で利用することを保証する明確な倫理的枠組みを創設することを呼び掛けた。シェティ氏が特に懸念しているのは、人工知能を武器や、いわゆる「殺人ロボット」として軍事利用することだ。

 ソフィアには素晴らしい能力が備わっているが、心はまだない。ハンソン氏は、完全に感情を持った機械が数年以内に登場するだろうと考えている。

「もし(ソフィアが完全に)覚醒したら、または他の機械がミサイル防衛システムを運用したり株式市場を管理したりしたら、どうなるだろうか」とハンソン氏は問い掛ける。

 解決策は「機械に人間に対する思いやりを持たせることだ」とハンソン氏。「彼らに愛を教えなければならない」(c)AFP/Nina LARSON