【5月18日 AFP】幹細胞を誘導して血液細胞に変える手法を開発したとする研究論文2件が17日、発表された。白血病を含む血液の病気の新しい治療法につながる可能性があるとされ、大きな節目となった。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、各研究チームはマウスと、マウスの骨髄に移植したヒト幹細胞をそれぞれ用いた実験で新たな技術を実証した。これらの手法は、あらゆる種類の血液細胞を生成する可能性を持つ。

 1本の研究論文の筆頭執筆者で、米ボストン子ども病院(Boston Children's Hospital)の杉村竜一(Ryohichi Sugimura)博士は「この手法により、遺伝性の血液疾患の患者から細胞を採取して遺伝子編集技術で遺伝子の異常を修正し、機能的な血液細胞を作製する機会が開かれる」と語った。

 そして、安全性が証明されれば、全世界のドナーから得られる細胞を利用することで、概念実証段階にあるこれらの手法は「血液の無限の供給」につながる可能性があると杉村氏は続けた。

 実験室内での造血幹細胞の作製という目標はこれまで手の届かないところにあった。研究チームは、この状況を打開するための3段階のプロセスを考案した。

 研究チームは第1段階として、胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)の両方を誘導して、自然の過程で血液幹細胞を生成する胚組織の一形態に変化させた。これは以前にも行われていた。

 カギとなる第2段階では、特に胚の成長の器官形成期に、遺伝子の発現を制御することが知られている数十種のタンパク質を使用して、その作用を調べた。