ベン・ジョンソン氏起用CMに非難の声「薬物使用を称賛している」
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【5月16日 AFP】元陸上男子短距離のベン・ジョンソン(Ben Johnson)氏を広告に起用したオーストラリアのスポーツ専門ブックメーカーが、薬物使用を称賛しているとして、同国政府から非難を浴びている。
スポーツベット(Sportsbet)社によるスマートフォンアプリの90秒CMでは、メダルやトロフィーに囲まれた机に座るジョンソン氏が、1988年の五輪金メダリストとしての設定で出演。「アンドロイド(Android)にロイド(roid、筋肉増強剤)を注入する」とうたう同アプリのCMでは、「能力向上の話になるとベンは本当に物知り。だからこそ、彼はパワーアップされたスポーツベットの新アプリを宣伝することができて喜んでいるんだ」とのナレーションが流れている。
これを受けたオーストラリアのグレッグ・ハント(Greg Hunt)スポーツ相は、今回の広告は「違反行為に問題はなく、むしろ報いられたり、称賛されたり、笑いの対象になったりすべきだとの誤ったメッセージを送っている」と強く批判している。
さらにハントスポーツ相は15日、民間ラジオ局2GBに対して「彼らは薬物使用を称賛し、相当な額の大金を有名薬物違反者に払っている」と語った。
「率直に言って、クリーンな選手たちにとっての侮辱行為だ。私の考えでは、彼らは広告を打ち切りにし、有名薬物違反者に払ったのと同額をジュニアスポーツ界に払うべきだ」
ジョンソン氏は1988年ソウル五輪のドーピング検査で陽性反応を示し、男子100メートルで獲得した金メダルを剥奪された。カナダ出身の同氏が出演した今回の広告では、ドーピング違反の典型とされる黄色のジャケットを着用した自転車選手や筋肉隆々の水泳選手、「超人ハルク(The Hulk)」のようなボディービルダーも登場している。
オーストラリア反ドーピング機関(ASADA)は声明で「この広告は、スポーツ界における運動能力向上目的での薬物使用を軽視し、ドーピングの使用は普通のことだとする完全に誤ったメッセージを送っている」と述べ、すでに公式に苦情を申し立てたという。
「この広告キャンペーンは、クリーンな選手の功績を軽視し、世界中でクリーンなスポーツを守ろうとしている人々を侮辱している」
しかしながら、当のスポーツベット社は、今回の騒動を一笑に付している。
同社はウェブサイト上で「(周囲の)怒りはマシュマロが焼けてしまうくらい厳しいものだ」とすると、「政府から噴き出している一連の怒りには一つだけ問題がある。それは、国民がまったく怒っているように見えないということだ。実際、人々は気に入っているみたいだ」と付け加え、交流サイト(SNS)上に投稿された肯定的意見を取り上げている。(c)AFP