【5月11日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による連邦捜査局(FBI)ジェームズ・コミー(James Comey)長官の解任は、米政界に衝撃を与えた。2013年に長官に就任したコミー氏は、米大統領選期間中から選挙後を通して米国政治に大きな役割を果たした。

 コミー氏は昨年の米大統領選にロシア政府が干渉した疑惑をめぐる捜査を指揮しており、今回のトランプ氏による解任は、トランプ氏の側近らとロシアの関係をめぐるFBIの捜査を封殺することが狙いではないかとの疑問が民主党からは噴出している。

 一方のトランプ氏は、大統領選の対立候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinto)氏の私用メール問題に対する捜査の処理が誤っていたことが、コミー氏解任の唯一の動機だと釈明している。

■FBI長官解任をもたらした司法副長官メモ

 当局によれば、トランプ氏がコミーFBI長官解任の決断を下す基としたのは、新任のロッド・ローゼンスタイン(Rod Rosenstein)司法副長官から受け取った3ページにわたるメモだった。

 ローゼンスタイン氏の書簡には、クリントン氏が国務長官在任中に公務で私用メールを使っていた問題に関する長期捜査の最終段階で、コミー氏の対応にみられたとされる一連の不手際が列挙されていた。

 ジェフ・セッションズ(Jeff Sessions)司法長官はこの副長官による評価を基に、コミーFBI長官解任をトランプ大統領に進言。これを受けてトランプ氏は直ちに措置を講じた。

 司法副長官のメモは、コミー氏が昨年7月5日の記者会見でクリントン氏の行動について「極めて軽率」としながらも、刑事訴追の勧告を要しない事案として捜査を終了すると公表したことに過失があったと批判。刑事訴追の有無に関する公式声明の発表は通常「FBI長官の役割ではなく」、FBIからの勧告に基づき連邦検察当局と司法省が取り仕切るものだと指摘した。

 さらにメモは「(コミー)FBI長官は、犯罪捜査を終了した被疑者の名誉を棄損するような情報を公表するために記者会見を開くことはないという長年の原則も無視した」と糾弾している。