【5月3日 AFP】タイ北東部コラート(Korat)県の高校生、ナルディー(Naruedee Jotsanthia)さん(18)は昨年、教師が投げつけたマグカップが頭に当たった後、顔の左側がまひしてしまい、左目を閉じることもできなくなってしまった。二度と笑うことはできないと考えたこともあったが、今では笑顔を取り戻している。

 ナルディーさんに対する暴力行為は瞬く間に大きな話題となり、教師の権威が非常に強いタイの教育システムについて議論が再燃した。

 ナルディーさんはAFPの取材に対し「自分の顔を見た時、受け入れることができなかった」「自傷行為も頭をよぎった。本当に信じられなかったんだもの」と当時の状況を語った。

 ナルディーさんの夢は客室乗務員になることだったが、航空会社が雇うことを考えてくれるチャンスはほとんどないと感じているという。

 だが一方で、名も知らぬ人々からの資金援助を受けて、数か月にわたって多額の費用がかかる医学的な治療やリバビリに取り組み、8か月が経過した現在、笑顔を取り戻している。

 まだ顔の左半分にまひが多少残るナルディーさんは「100%いつも通りではないかもしれない」「でも私がこれまで成し遂げたことに対してすごく満足しているの。少なくとも笑えるようになったんだもの」と語った。

 目上の人たちに対し疑問を投げかけることがタブーとされるタイではここ最近、ナルディーさんに対する教師の暴力行為の他にも、目下の人々に対する扱いをめぐって国民を激怒させる出来事が相次いでいる。

 今回の事件では、教師がナルディーさんに暴力を振るったことを学校側は認めているが、その数日後に発症した顔面まひの原因となったとの指摘については異議を唱えている。

 校長はナルディーさんの家族に補償金として5万バーツ(約16万円)を支払い、暴力を振るった教師は他の学校に異動したと述べている。

 一方でナルディーさんは、客室乗務員になるという夢を追いかけることに集中したいと話し、「私の夢は高望みなのかどうかわからないけれどね」と大きな笑みを浮かべた。(c)AFP/Jerome TAYLOR