【4月28日 AFP】2002年のフランス大統領選。極右政党「国民戦線(FN)」の創設者で初代党首のジャンマリ・ルペン(Jean-Marie Le Pen)氏が決選投票へ進んだとき、娘のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏は歓喜の涙を流した。

 結局、父親は敗れたが、15年後の今、党首を引き継いだカリスマ性のある娘は、フランス初の女性大統領、そしてFN初の大統領を目指している。

 4月23日の第1回投票では中道系独立候補のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)前経済相が得票率24.01%でトップに立ち、ルペン氏が同21.3%でこれに続いた。2人は、5月7日の決選投票で対決する。

■原動力は「怒り」の機運

 ルペン氏がこの6年間、イメージ一新に取り組んできた「愛国主義者の党」は、反グローバリゼーションや反エスタブリッシュメント(既存支配層)といった人々の怒りの原動力に押されて勢力を拡大してきた。英国の国民投票での欧州連合(EU)離脱派の勝利や、米大統領選でのドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の勝利を後押ししたのと同じ怒りだ。

 ルペン氏は、EUは「崩壊する」と予測し、フランスをユーロ圏から脱退させ、EUからの離脱についても国民投票を行うと公約している。

 だがこの公約は不安を呼んでいる。大半の世論調査で、フランス国民は経済的な混乱を恐れ、EUからのフランスの離脱「フレグジット」や通貨フランの復活に反対している。ルペン氏はそのリスクを重要視せず、懐疑的な対立候補やエコノミストたちがデマを流していると非難している。

 一方で彼女は、反移民や反イスラム原理主義といったFNの従来の主張を固持してきた。フランスでは2015年以来、イスラム過激派による攻撃が相次ぎ、計239人が犠牲になっており、大統領選の一大争点になっている。今回の第1回投票の3日前にも、首都パリ(Paris)のシャンゼリゼ(Champs Elysees)通りで警官が射殺される襲撃事件が起きたばかりだ。

 ルペン氏は2011年にFNの党首に就任すると党のイメージ浄化に乗り出し、2014年の欧州議会選挙で同党を勝利に導いた。また2012年に行われた前回の仏大統領選では、ルペン氏は得票率18%足らずで3位に終わった。

 そんな中、今年の大統領選でルペン氏はFNの原点に立ち返った。第2次世界大戦(World War II)中、ナチス・ドイツ(Nazi)占領下のビシー(Vichy)政権の時代に仏警察がユダヤ人1万3000人以上を一斉検挙した事件について、ルペン氏はフランスに責任はなかったとの見解を示した。

 彼女の発言は、父親の歴史修正主義と比較された。父親のジャンマリ・ルペン氏はホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を「歴史的にささいなこと」だと発言し、党首となったわが子から2015年に党除名処分を受けた。傷心した同氏は素直に受け入れず、FNとの法廷闘争にまで発展した。