【4月21日 AFP】米国に在住するメキシコ出身のミゲルさんとエスペランサさんのペレス夫婦は、米国に敬意を表し、三角に折りたたんだ星条旗を手にして、米シカゴ(Chicago)の移民裁判所前に立っていた。

 この旗はかつて、ぺレスさん夫婦の息子で特殊部隊の隊員だったミゲル・ペレス・ジュニアさん(38)が2度従軍したアフガニスタンの米軍基地に掲げられていたものだ。だが今やジュニアさんの運命はこの裁判所の中の移民判事の一存に懸かっている。

 ジュニアさんは退役軍人で、合法永住者だが、薬物犯罪で有罪判決を受け、メキシコ本国送還の危機にさらされている。米国に帰化していれば、刑期を終えた後、釈放されるだけで済んだはずだ。しかし彼は今、本国送還を避けるべく奮闘していた。名誉除隊した退役軍人には同様の状況にある人が大勢いる。

 ジュニアさんは軍に入ったときに、自動的に米国に帰化したものだと思っていた。米軍に入隊する移民たちによくある誤解だ。

 軍に入れば簡易帰化制度の対象とはなるが、それだけでは帰化したことにはならない。やはり帰化を申請し、審査手続きを経なければならない。

 ジュニアさんは昨年、刑務所からの早期釈放を認められた後に、移民当局に再勾留された。彼の家族は、息子の従軍経験が、減刑や米国残留を認められる理由になると期待していた。

 母親のエスペランサさんは、息子がドラッグに走ったのは戦争による心の傷のせいであることや、麻薬組織がはびこるメキシコで息子が直面する危険性について、裁判官が考慮してくれるはずだと楽観していた。

 本国送還された退役軍人たちが、米国法によって再入国を認められているのは死んだ場合のみ、つまり軍人墓地に埋葬するために限られている。