【4月26日 AFP】消滅の危機がささやかれている世界のサンゴ礁だが、彼らが生き残るためのカギは、日本の小さな火山島の海にあるかもしれない──世界の海を調査している科学者らが伊豆諸島の海に注目している。

 フランスが主導する科学調査のためのスクーナー船「タラ(Tara)号」に乗船した研究者らにとって、伊豆諸島の式根島(Shikine Island)の海底は「生きた実験室」だ。彼らは、気候変動による損傷作用からサンゴを守るための手がかりを探している。

 サンゴ礁は、世界の海洋面積のわずか0.2%を占めるにすぎないが、これを生息場所とする動植物種は30%に上る。サンゴ礁は、これらの生物に食物を与えるだけでなく、天敵から身を守る手段も提供している。

 調査コーディネーターを務めた筑波大学(University of Tsukuba)のシルバン・アゴスティーニ(Sylvain Agostini)助教は「サンゴ礁の消失は、恐ろしい結果を招くだろう」と警告を発する。

 式根島の一部の入り江では、火山活動によって海底から二酸化炭素(CO2)が噴出し、海水に溶け込んだ結果、海水のpHを低下させている。この海の状態は、世界のCO2排出が2100年まで野放しで続いた場合に予想されるものと同等と考えられている。

 CO2の増加は、温暖化に伴う海水温の上昇だけでなく、酸性化という海水の化学的性質の変化も引き起こす。

 研究者らによると、東京の南160キロに位置する式根島の一部の海域では、サンゴを含む海洋生物が、通常よりpHの低い海水の中でどのようにして存続できるかを垣間見ることができるという。

 オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁で世界遺産(World Heritage)にも登録されているグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)が危機的状況に直面している中、北限海域にある日本のサンゴ礁は、海洋生物に関する知識を増強する重要なデータを提供するものとなっている。

 科学者らは今月、グレートバリアリーフが海面温度の上昇に起因する白化現象によって深刻な危機にさらされていることを明らかにした。この現象は、水温上昇などのストレスによって、サンゴの組織内に共生する藻類が放出され、サンゴへの養分の供給が阻害されている状態である。

 グレートバリアリーフでは、今年も大規模な白化現象が、昨年に続き確認されており、科学者らは2年連続で白化したサンゴの回復について「見込みゼロ」と厳しい見方を示している。