【4月20日 AFP】フィリピン南部の沖合で、エントツガイ(学名:Kuphus Polythalamia)と呼ばれる非常に珍しい生物が捕獲され、この巨大な黒色の生物の生態を解明したとの研究結果が今週発行された米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。この論文によると、研究者らが生きているエントツガイを調査したのは今回が初めてだという。

 エントツガイはフナクイムシ科の二枚貝の仲間で、もろく牙のような殻を持ち、海底の泥などの堆積物の中に生息している。バクテリアが分泌した残存物のみを栄養にして生きているとみられ、場合によっては全長155センチ前後まで成長する。

 分析を行った研究者らによると、エントツガイには消化器官はあったものの、その器官が萎縮し、もはや機能していないようだという。代わりにエントツガイはえらに共生しているバクテリアに依存し、このバクテリアが海底の堆積物の中の硫化水素をエネルギー源とし、炭素の痕跡を放出しているとみられている。

 フィリピンの海洋生物学者ジュリー・アルバノ(Julie Albano)氏によると、今回エントツガイが見つかったのは南部スルタンクダラット(Sultan Kudarat)州沿岸の町カラマンシグ(Kalamansig)の沖合。

 アルバノ氏によると、エントツガイは国外の海洋学者には未知の存在だが、地元の人々にはなじみの深い生き物で、食用にもされている。味は「タコのようで、地元では性欲促進作用があるとされている」と語った。(c)AFP