メキシコ議会、軍の警察活動合法化を審議 虐待の正当化懸念広がる
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【4月17日 AFP】メキシコの若きエンジニア、ヘトロ・サンチェス(Jethro Sanchez)さんはある日の午後、町のイベントに参加してにぎやかなひとときを楽しんでいた。その数時間後、ヘトロさんは息絶えようとしていた──兵士らに酸で焼かれ、土中に生き埋めにされて。父親のエクトル(Hector Sanchez)さん(63)が明かした。
政府は10年前、麻薬犯罪対策に軍を起用。しかしこの種の警察活動の訓練を受けていない兵士らの間で、罪のない容疑者への拷問が横行していると、批判の声が上がっている。
議会は現在、軍の公安活動への投入を合法化する法案を審議しているが、この改革が結果的に虐待に走る兵士らの擁護につながるのではという懸念が広がっている。
自動車部品のリサイクル業を営むエクトルさんは、息子の墓前に立ち、ヘトロさんは大学院の修士学生で、ある事業投資がうまく行き、祝賀会に参加していたのだと声を震わせた。軍が主張したような麻薬密売人などではなかった。「息子をあんな目に遭わせる理由なんてなかったのに」
■顔に酸
2011年5月1日、当時26歳だったヘトロさんは、首都メキシコ市(Mexico City)の南に位置する町ヒウテペック(Jiutepec)で、出資していたサッカーチームの勝利を祝う地元のイベントに出席していた。
そこで小競り合いが発生し、警察はヘトロさんの身柄を拘束。さらにヘトロさんを、麻薬密売人だとして軍に引き渡した。
2か月後、ヘトロさんは東に150キロ離れたプエブラ(Puebla)で遺体となって発見された。
息子を失った悲しみを胸に、6年に及ぶ法廷闘争に耐えてきたエクトルさんは、息子の死に関連して逮捕された兵士3人がついに裁判にかけられ、有罪判決が下されればと願っている。