少女像で「負の力や脅威」の象徴に、雄牛像作家が苦言 米NY
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【4月13日 AFP】米ニューヨーク(New York)ウォール街の銅像「チャージング・ブル(Charging Bull)」と「恐れを知らない少女(Fearless Girl)」像の設置をめぐり、作家と市当局者らが対立しており、男女平等権やアート作品の誠実性、そして著作権に関する議論が熱を帯びている。
ウォール街の南側に30年近く置かれている「チャージング・ブル」は、イタリア系米国人アーティストのアルトゥーロ・ディ・モディカ(Arturo Di Modica)氏(76)の作品。同氏は12日、「恐れを知らない少女」像は同氏の著作権を侵害し、芸術的なメッセージをゆがめていると指摘。この少女像を別の場所に移動させるべきと主張した。
ディ・モディカ氏は、1987年の株式大暴落に立ち向かった米国の精神力をたたえ、1989年12月に同ブロンズ像をウォール街に設置した。
しかし先月、同じく米国人アーティストのクリステン・ビスバル(Kristen Visbal)氏の「恐れを知らない少女」像がこの雄牛像に向かい合うように設置されて以降、その影は薄くなっていた。
両手を腰に当てて胸を張った姿勢の少女像は、ウォール街を象徴する雄牛の銅像に毅然(きぜん)と立ち向かうように置かれている。
少女像は、女性の役員登用を企業に促すことを呼びかける目的で、米大手資産運用会社のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が委託したもので、当初は、設置から1週間後に撤去される予定となっていた。しかし反響が大きく、ニューヨークのビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長が、設置期間を2018年3月まで延長することを決めた。
少女像の設置を受け、ディ・モディカ氏の代理人らは、雄牛像が「負の力や脅威」の象徴としてゆがめられ、同氏のキャリアにおける輝かしい功績は許可なく単なる派生作品へと変えられてしまったことを主張。代理人のノーマン・シーゲル(Norman Siegel)氏は、「ここでは男女平等権を支持しない人は誰一人いない。問題なのは著作権や商標権だ」と指摘した。
シーゲル氏は、ニューヨーク市長と少女像の委託責任者に対し、友好的な解決策を模索するよう呼び掛けており、話し合いがもたれなければ、訴訟も視野に入れた「厳しい決断」に迫られるとけん制している。
しかし、デブラシオ市長は、譲歩には消極的のようだ。12日のツイッター(Twitter)への投稿では、「女性に好意的でない男性が幅を利かせていること、それが我々が少女像を必要としている理由だ」と書いた。
ディ・モディカ氏の弁護士らは、少女像を設置したSSGA社が、商業広告目的で公共物を無料で利用していると主張し、市が許可を与えたこと自体が妥当だったのか疑問を投げかけている。
しかし、ディ・モディカ氏の雄牛像も、当初は米ニューヨーク証券取引所(NYSE)のすぐそばに許可なく設置されたものだった。像はその後、市からの許可を得て、現在の場所に置かれることになった。(c)AFP