【4月6日 AFP】霊長類の中で人間に最も近い種のオランウータン、チンパンジー、ボノボなどの大型類人猿は、人間と同じように、他者が間違った考えを持っているのを見分ける能力があるとの研究論文が5日、発表された。

 米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)に掲載された論文によると、大型類人猿は、物の在りかについて思い違いをしている他者を進んで手助けするという。

 独マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)のダビド・ブテルマン(David Buttelmann)氏は「類人猿が思い込み(誤信念)というものを理解して他者を適切に助けることを示したのは、今回の研究が初めてだ」と述べた。

 研究チームが実験に使用したテストは、1歳半前後の人間の幼児向けに開発されたもので、他者が誤った考えを持っていることを理解できるかどうかを判定する。

 まず、類人猿が見ている前で、1人目の人間が2つの箱のどちらか一方の中に物を入れてその場を離れ、2人目の人間がその物を箱から取り出し、もう一方の箱の中に入れる。戻って来た1人目は、物が移動されたことを知らず、こちらに入っているはずだと考えて初めの箱を開けようとする。これが誤信念のテストとされるもので、対照実験として、1人目が室内にとどまり、2人目が物を入れ替えるのを確認する状態でもテストも行う。

 独ライプチヒ動物園(Leipzig Zoo)で行われた今回の研究には、チンパンジー、ボノボ、オランウータンなど合計34匹の大型類人猿が参加した。

 物が入れ替えられるのを1人目が見ていない誤信念のテストでは、猿たちは偶然よりも有意に高い頻度で実際に物が入っている箱を的確に選んだ。

 研究チームは、類人猿が人間の幼児と同じように「どちらの箱に物が入っているかについて誤った考えを持っている人が物を見つけ出すのを手助けする傾向が強い」ことを発見したと論文で述べている。

 これまで研究者らの間では、このように他者の意図を理解する、いわゆる「心を読む」能力は類人猿には備わっていないと考えられていた。

「類人猿は、社会的交流の中でこの種の理解を利用する能力がある」と論文は結論付け、「今後、研究の裏付けが得られれば、社会的認知に関する大型類人猿と人間との間の明らかな違いは、他者の心を『読み取る』基本的な能力ではなくて、どこか別のところにあると考えられるようになるだろう」と述べている。(c)AFP