【AFP記者コラム】中国・全人代、規律と統制の国を象徴する大会
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【4月7日 AFP】おかしく聞こえるかもしれないが、私は中国・北京(Beijing)の中心部で毎年開催される全国人民代表大会(全人代)の撮影がたまらなく好きだ。この国の核心を撮影できる機会だからというだけでなく、中国を拠点とするカメラマンにとっては最も制限を受けずに撮影できる場の一つだからだ。
この年次会合は「両会」として知られる。国会に相当する全人代と、中国人民政治協商会議(政協)だ。合わせて、政治家や軍人、少数民族など5000人ほどが集まる。10日間続き、天安門広場(Tiananmen Square)の前の巨大な人民大会堂(Great Hall of the People)で開催される。同僚のカメラマン、グレッグ・ベイカー(Greg Baker)、ニコラス・アスフォウリ(Nicolas Asfouri)、ワン・ジャオ(Wang Zhao)と私の4人で撮影にあたっても、やることはたくさんある。
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中国といえば、象徴的なイメージがいっぱい思い浮かぶ。ここに3年間住んだ私が最初に思いつくのは、軍関係の警官または兵士だ。それは私だけではないようで、その手の写真はAFPのクライアントにも受けがよく、最もよくダウンロードされる傾向にある。もちろん、私が撮る写真の種類は多岐にわたるが、特に全人代のような行事では、クライアントが期待する写真を撮影するのが重要だ。
カメラマンにとって、この年次会合は特別な楽しみだ。警官と兵士に好きなだけ近づいて、自由に撮影できる唯一の機会だ。しかも彼らは何も言わない。通常、彼らは写真を撮られることを好まない。私は今年の全人代の数日前に挑戦してみたが、彼の態度はあからさまだった…
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官僚が大勢集まる会合は撮影取材として最適ではないと思われるかもしれないが、ここは中国だ。その行事は万全の準備がされていて、まるで脚本のあるダンスのよう。細部にわたるまで完璧に近い調整がされており、まるで幾何学模様のような印象的な写真が撮れる。
ウエートレスが会場を準備する様子から……
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ウエーターのお茶の出し方まで……
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職員らは私たちの存在をよく分かっている。彼らは時々、気を緩めるが、撮影されていることに気付くと、すぐに気を引き締める。運が良ければ、「素」と「規律」の対比をカメラに収められる。
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この会合のもう一つの素晴らしい点は、カメラマンの自由だ。いったんセキュリティーをパスすれば、私たちは基本的に自由の身。往々にしてメディア規制が敷かれる中国のような場所では、気分を一新してくれる。
天井の巨大な赤い星から、1枚のカーテンを引くといったささいな行為まで、全人代は絵になる被写体であふれている。中国を象徴するあらゆるものが、この10日間に一か所に凝縮され、それらの写真を撮影できる満足感でいっぱいだ。
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権力の誇示は全人代のあらゆる場面で見られる。例えば、何百人もの代表者たちは車に乗って同時に到着し、会場を後にするときも大抵、同時だ。強さと力が漂ってくる。
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私が全人代を取材するのは今回が3度目だ。回を重ねるごとに余裕が生まれる。2015年に初めて取材したときは、ただの傍観者に等しかった。2度目は少し違うことにも挑戦した。そして今回はもっと冒険し、太陽の光を利用して外観の撮影など、してみた。北京は世界で最も大気汚染がひどい都市の一つだが、全人代が開催されている間は、当局が工場の稼働時間を短縮するよう命じるため、空はいつもより少し青くなる。外の撮影でいい光が採れる希少なチャンスだ。
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全人代の撮影は回を追うごとに緊張が和らいでいく。何が起きるか予想できるからだ。1度目の取材時は、例えばバスや軍の到着などすべてが同時に起こり、少し圧倒された。だが今は日程や会場の環境が分かっているため、いつ何が行われているときに太陽が出てくるなどを把握している。だから、最高のショットを撮るためのカメラの位置とシャッターチャンスを計算できるというわけだ。
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今年の全人代で私たちAFPのカメラマンが撮影した写真を見ると、多くの意味でこの国の核心を捉える仕事ができたと思う。少なくとも、そうだとうれしい。(c)AFP/Fred Dufour
このコラムはAFPパリ(Paris)本社のピエール・セレリエ(Pierre Celerier)記者とヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者が共同執筆し、2017年3月31日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。
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