正男氏の遺体返還、北朝鮮の狙いは証拠隠滅 専門家が指摘
このニュースをシェア
【4月1日 AFP】マレーシアで殺害された金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏の遺体が北朝鮮に返還されたことについて、専門家らは、北朝鮮の狙いは金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)政権による暗殺の証拠隠滅だと指摘している。
正恩氏の異母兄で、「金王朝」の後継者候補ともされていた正男氏は2月13日、マレーシアの首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)の空港で、猛毒の神経剤VXにより殺害された。
マレーシアと北朝鮮の関係は事件を受けて悪化。両国は互いに相手国の大使を追放し、国内に滞在する相手国市民の出国を禁じていたが、今週になり、出国禁止措置の解除と、正男氏の遺体の北朝鮮への引き渡しに合意した。
専門家らは、北朝鮮は遺体をすぐに処分し、事件を闇に葬ろうとするだろうと予測している。
脱北者で、現在は韓国国家安保戦略研究所(Institute for National Security Strategy)で研究者を務める金光鎮(キム・グァンジン、Kim Kwang-jin)氏は「北朝鮮は遺体を焼却するだろう」と述べた。
金氏は北朝鮮が正男氏の死因を病死と宣言し、一連の騒動の責任を敵国になすりつけるつもりだと指摘。「北朝鮮は、キム・チョル(Kim Chol)という自国民が心臓発作で死亡し、韓国や米国が騒動を巻き起こしたと主張するはずだ」と述べた。
正男氏はマレーシアで死亡時、キム・チョルと名前が記載されたパスポートを所持していた。北朝鮮は事件の被害者の身元確認を拒否しているが、マレーシア当局はDNAサンプルを基に、遺体の身元を正男氏と確認している。
脱北前は北朝鮮の国営保険会社で働いていた金氏は、北朝鮮政府は証拠隠滅によって反対勢力の関心をそらすこともできると指摘。AFPに対し、「北朝鮮が遺体の引き渡しを求めるのは当然のこと。遺体が国外にある限り注目を集めてしまう」と語った。
専門家らはまた、北朝鮮が国民に真実を知られないよう、遺体の取り扱いを秘密裏に行うだろうとみている。
北朝鮮問題に詳しい韓国・東国大学校(Dongguk University)の金龍見(キム・ヨンヒョン、Kim Yong-Hyun)教授は「正男氏の存在と彼の暗殺は、北朝鮮にとって国民に知られてはならない『パンドラの箱』のようなもの。全てが最低限の手順で秘密裏に行われるだろう」と述べた。(c)AFP/Hwang Sunghee